色とウソを売る陰間たちの愛憎渦巻く攻防戦! チャラ系男子×真面目男子のブロマンス『陰の花は檻に咲く』

マンガ

公開日:2019/6/25

『陰の花は檻に咲く 1』(羽野ちせ/白泉社)

 境遇は、人の在りようを大きく左右するものだ。今いるところで花を咲かせるのが理想とわかっていても、くじけそうになったとき、そこまで気持ちを強く持つことは難しい。だからこそ、その困難を乗り越えて咲く花は、強く美しく胸を打つ──そんなことを思わせるのが、『陰の花は檻に咲く 1』(羽野ちせ/白泉社)という作品だ。

 時は江戸、所は芳町(よしちょう)──色と嘘を売る男娼たちが艶やかに咲き乱れる、男たちの極楽。主人公の吉野忠通は、1週間ほど前、この地にある江戸一番の陰間茶屋・花籠屋に売られてきた。

 格式高い名家の嫡男である忠通が、少年が男に色を売る陰間茶屋で用心棒として働いているのは、火事で吉野家が取り潰しとなったから。用心棒は、陰間(男娼)として春を売るまでのつなぎの任だ。背中に負った大きな火傷が癒えるひと月後には、“楓”という源氏名での水揚げ(はじめて客と肉体関係を結ぶこと)が決まっている。

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 しかし忠通は、「武士として誇り高く生きよ」と厳しく育てられてきた男だ。将来は、武士としてこの身を幕府に捧げるつもりでいた。それなのに、なぜ自分は、このように恥ずべきところに身を置いているのか……忠通、いや、“楓”の嘆きを煽るのは、花籠屋で一番人気の陰間・蓮(れん)だった。

 日陰に身を置いていても、楓には武士としての誇りがある。楓は、金のためとはいえ、男相手に媚や体を売る蓮のことを、軽薄だと下に見ていた。そんなある日、陰間に堕ちたことを馬鹿にされた楓が揉め事を起こしかけたとき、いつもは尊大な態度の蓮が、笑顔でその場をおさめてくれる。「助けなくとも自分でどうにかできた」と虚勢を張る楓に、蓮がついに激昂し──。

「花籠」という名のそこは、少年たちにとっての檻だ。蔑まれ、虐げられ、傷だらけになりながらも、男娼たちは艶やかに美しく咲き、男たちを魅了する。泥の中に咲くハスのようにたくましく凛々しい蓮の生き様に触れ、楓は両親の言葉を思い出す。「誇り高く生きよ」──“誇り”とは、男に抱かれ、媚を売って失ってしまうようなものではないのだ。楓は、自分が置かれた檻の中で、みずからの色を咲かせようと決意するのだが……?

“生きづらさ”という問題は、現代でも解消されたわけではない。むしろ、ヴァリエーションを増やして存在する。だからこそ本作は、アプリ「マンガPark」でも、根強い人気があるのだろう。

 愛憎渦巻く花の檻で繰り広げられる、チャラ系男子×ピュア真面目男子の匂い立つような攻防戦。遊郭ものやブロマンス好きなおなごの心が、華やかに潤います。

文=三田ゆき