そんな採用でよろしおすか?20年間内定辞退ゼロの小川珈琲が教える“心づくしの採用術”

ビジネス

2019/6/27

『そんな採用でよろしおすか? ~心づくしの採用が起こした京都小川珈琲の奇跡~』(原田英美子/マイナビ出版)

 共に会社を成長させてくれる人材が欲しい。どんな企業の採用担当者も、そう願ってやまないはず。だが、少子高齢化が叫ばれている近年は若年層が少なく、フリーランスなど多様な働き方も広まってきているため、新卒者を獲得することが難しい。

 そんな風潮の中、20年連続で内定辞退ゼロという快挙を成しているのが、京都にある小川珈琲。学生を対象とした合同企業説明会にはさまざまな会社が参加するものだが、小川珈琲の受付にはいつも人だかりができており、行列が見られる。

 総従業員数185名(2018年1月実績)と、決して大企業ではない小川珈琲はなぜ、それほどまでに学生から支持されるのか。それは採用担当者・原田英美子さんが学生との一期一会を大切にし、“心づくしの採用”をしているからである。

『そんな採用でよろしおすか? ~心づくしの採用が起こした京都小川珈琲の奇跡~』(原田英美子/マイナビ出版)は、原田さんの想いに触れられる貴重な1冊。彼女は、どれほど小さな会社であっても、どれほど経験の少ない人事担当であっても、魂を込め、言葉を大切にすれば、素晴らしい採用が実現できると考えている。

すべての心ある学生さんたちに、それぞれにふさわしい職場や上司、会社と出会って欲しい。学生さんにとっても会社にとってもウィンウィンになれるようないい関係を見つけてもらいたい。それが私の切なる願いです。

「お金儲けより人儲け」をモットーにする原田さんの採用テクニックは会社を成長させたいと願う方の心に、新しい風を呼び込む。

■行列のできる会社説明会の開き方

 今でこそ、小川珈琲の会社説明会には行列ができているが、かつては誰ひとりとして足を止めてくれないほどだった。そんな状況を変えた原田さんが意識したのは、企業が学生を選ぶのではなく、学生から選ばれる企業であり続けるということ。

 例えば、会社説明会では履歴書をチェックし、学生にフルネームで呼びかけ、名前の由来などをひとりひとりとじっくり話す。こうすることで、学生の中に自社の印象を深く刻み込む。

 そして、就職活動というしんどい状況と戦っている学生たちに元気をチャージすべく、その年に話題となったテーマや人物に関する演奏を「ウェルカム・ミュージック」として流し、締めのスピーチで言霊を贈る。

「アナと雪の女王」をウェルカム・ミュージックにした年は作品のテーマである“ありのままの自分”にスポットを当てたスピーチを行ったそう。「諦めないでほしい」という祈りがこもった感動的なスピーチは、学生たちのくたびれた心に染み入るのだ。

 学生の心に寄り添う会社説明会を開催し続ける。小川珈琲が学生から注目を浴びる理由は、そこにある。原田さんが見せる採用担当としての思いやりは、これからの人事に求められる一番大切なスキルなのかもしれない。

■絶対に入社させたい学生はどう射止める?

「この子は絶対、うちの会社に欲しい」そう思った学生のハートを射止めるには、会社説明会後にメールと電話を上手く使い、心をひきつけるのがポイント。

 小川珈琲では会社説明会の後、学生に現在の志望順位をアンケートに記入してもらっている。それを踏まえ、狙っている学生に送付するメールには“あなただけ”の文章を入れ込み、特別感を与える。もう一度説明会に来てもらうため、前日に電話をかけるのもポイントだ。

 ただし、同じ大学に欲しい学生とそうではない学生がいる場合はどちらにもメールや電話をし、欲しい学生のほうにのみ熱い想いを伝えるのがカギなのだそう。

 一粒一粒の珈琲豆を大切にするように、ひとりひとりの学生と向き合い続けている小川珈琲は、人が繋がり合うことで成長してきた企業。私たちは、その姿勢から多くの可能性と自社の未来を輝かせる方法を学ぶのだ。

文=古川諭香