苦手・限界を乗り越えるのに必要なのはアレの自覚。メンタリストが教える限界突破法

ビジネス

公開日:2019/7/1

『無理なく限界を突破するための心理学 突破力』(メンタリスト DaiGo/リベラル社)

「限界を超える」という言葉を聞くと、私は『幽遊白書』という漫画に出てくる戸愚呂弟というキャラクターを思い出す。こいつは敵なのだが自分の筋肉量を60%、80%、100%と調節してくる。そして最後には自分の限界を超えて120%のパワーで主人公に襲いかかってくるのだ。120%の力を発揮した彼の攻撃はすさまじく、幼心に「こいつには勝てない」と思ったものだ…結末は実際に作品を読んでほしい。わかるのは、限界を超えた力には、大きな消耗を伴うということだ。

『無理なく限界を突破するための心理学 突破力』(メンタリスト DaiGo/リベラル社)は、タイトルのとおり、無理せず勝ちたい人のための「頑張らない」限界突破法が記されている。

 人間の限界は、その日の天気や体調などの外部の要因で簡単に左右される。「これさえやればOK」という必勝法は存在せず、がむしゃらに体力や精神力を削って物事に当たるのは効果的な方法ではない。

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「突破力」とは、自分の思考のクセを見極め、目の前の問題を解決する力のことを指す。それを身につけるためのキーワードは、「合理性」「客観性」である。

■人生の足を引っ張るバイアスとは

 本書では、人間の脳に備わった思いこみや先入観(バイアス)を自覚することで、合理的な判断力を養えると述べられている。

 例を挙げてみよう。ついついマイナスな現象に意識が向かう「ネガティブバイアス」。これに陥りやすい人は、ネガティブな思考や事象にとらわれると視野が狭くなり、多角的な視点を損ないやすい。

 一方で、自分を平均よりも優れていると思う「隠れナルシストバイアス」は、自分の能力を過信する故に具体的な努力をしないので実力が伸びないという、聞いているだけで耳が痛くなるバイアスだ。

 この「バイアス」は、誰でももち得るものだ。だが、「自分はこういう思いこみをもちやすいようだ」と自覚するだけで、人間の脳には客観性が生まれ、合理的な判断ができるようになる。

■家計簿は、限界を超えるための重要アイテムだった

 自分のバイアスに気づいたら、それを徹底して可視化するのも大切だ。本書では「セルフモニタリング」という手法を紹介している。セルフモニタリングとは、自分の行動・思考・感情などを自ら観察し、記録していくことを指す。

 マッコーリー大学の調査によれば、自分の支出入を記録し続けていた人は、概してセルフコントロール能力が高かったという結果が出た。

 実は、記録するという行為が脳の興奮を静めるため、客観性をはぐくむことができるのだ。家計簿をつけていると、つけていないときと比べ「こんなことにお金を使っていてはいけないのでは?」と自分の浪費に対してブレーキがかかるようになった人も多いだろう。それが、客観性を修得し始めた証だ。一例として家計簿を挙げたが、自分の行動を記録できるなら、ダイエット記録でも、運動量でもなんでもかまわない。最低2週間続けてみよう。冷静な判断力がつきはじめているはずだ。

 がむしゃらに頑張って自分の限界以上の力を発揮する——。そういう生き方が輝くときもある。しかし、自分の限界を冷静に見つめ、ゴールに到達する道もあるのだ。スマートに合理的に、今の自分の働き方を振り返ってみよう。

文責=音田アユム