フツーのおばさんが“笑いの波状攻撃”をくり出す! SNSフォロワー数18万人の奇才が描く爆笑コミック

マンガ

公開日:2019/6/29

『おばさんデイズ』(まめ/扶桑社)

 どんな学校に通っていても、どんな職場に勤めていても、かならず身近にいる存在──それが“フツーのおばさん”。自分のおかんがフツーのおばさんだという人もいるだろうし、同僚がそうだという人もいるだろう。あなた本人がフツーのおばさんだという場合もあるかもしれない。まったく関わりがないという人はおそらくいない、“フツーのおばさん”。だからこそこの作品には、どんな人でも「あるある!」と言わせてしまう魅力があるのだ。Webサイト「cakes」でアクセス数ナンバーワン、“フツーのおばさん”の「ありそうだけど、ありえないくらいおもしろい」日常を描いた連載マンガ「おばさんデイズ」が、待望の単行本になった。

『おばさんデイズ』(まめ/扶桑社)を手にしてまず思うのは、「インスタに載ってる短いマンガ1本だけでも爆笑するのに、この本の厚みは…!」ということだ。いったいどれだけ笑わせるつもりなのか。その期待は裏切られず、ページをめくるごとに、独特のタッチで描かれる“おばさんワールド”に引き込まれていく。

 この部分を読んで、「なんだ、主人公がおばさんなだけで、よく見る日常あるあるじゃん」と感じた人は大間違いだ。インスタグラムで18万人にフォローされている著者のまめさんは、自身も40代の立派な“おばさん”。鋭い“おばさんならではの感覚”を生かして、巷のおばさんに目ざとくツッコミを入れる。

advertisement

 驚くべきは、これだけたくさんの小ネタが並んでいるのに、笑いのクオリティーが高いレベルで揃っていること。「cakes」連載時のネタを厳選したものに加え、単行本のための描き下ろしが20ページも収録されているのに、だ。オシャレとはまた違うヘタウマな絵柄で描かれる、こなれ感とは一線を画した脱力感のあるネタが、延々と力の抜けた笑いを誘う。気づいたときには、不思議な引力を持つ“おばさん沼”に、どっぷりとハマりこんでいる。

 私たち読み手が、いつのまにか本作に登場するおばさんに心を開いてしまうのは、ひとえにおばさんたちが素直だからだろう。めんどくさい人物に出会えば「めんどくさいんだけど」と心の中でつぶやくし、珍妙な自分の行動には「いや、何がおもしろいのこれ」と胸中でツッコミを入れる。そう、おばさんたちは、私たちの生活に寄り添う代弁者…なのかもしれない。言っていることがあまりにも「ありそう」なあるあるだから、セキララに描かれたおばさんを見ると、おもしろくなってしまうのだ。

 どれだけカッコよく紹介しようとしてもどうにもカッコよくならない、それゆえに安心して笑えるのかもしれない脱力感1000%の“おばさんワールド”。その魅力に、あなたもぬるっとハマってみては?

文=三田ゆき