NHK『仕事の流儀』の再放送で人気再沸騰! 男からも頼られるカリスマ美容師の等身大の言葉

暮らし

公開日:2019/7/3

『這いつくばった奴が生き残る時代 道あけてもらっていーすか?』(高木琢也/宝島社)

 国内の人気俳優はもとより、サッカーのフランス代表に至るまで、いまや世界中の若者たちを虜にしつつあるヘアー・スタイリスト、それが高木琢也氏である。カリスマ美容師というと、女性からの指名が殺到してモテモテというイメージがある。しかし、ホットペッパー主催のビューティアワードで、2017年から19年まで、3年連続「メンズ部門」第1位を受賞した高木氏の場合は少し違う。限られた予約枠を巡り、女子に負けじと猛烈な勢いで、日本全国から男子たちが殺到する、頼られ兄貴なのである。

 6月24日には、高木氏を主人公にしたNHK『プロフェッショナル仕事の流儀』が再放送された。「どんなスタイルにする?」と問われた客のほとんどが「お任せします」と、高木氏に一任する。すると「じゃあ、カッコよくしちゃうね」「人生をハッピーに変えちゃうね」と応じ、その人の顔立ちや頭の形などに最適なヘアスタイルへと、変身させてしまうのが高木流なのである。

 そして有名無名は問わず、指名客すべてに対して「ヘアスタイルで人生を変えてあげたい」「自分に自信を持ってもらいたい」という思いを真剣に込め、ハサミを入れる。髪質を見つめる瞳は、そんなヘアー・スタイリスト魂がゆらめいているかのように力強い。

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 自信?
 ねーよ
 ねーから今作ってんの

 俺みたいなクソガキでも変われたんだから
 みんなも変われるよ。
 てか、変わる気ある?
(本書より引用)

 5月下旬の発売以来、重版を重ねている高木氏の処女作『這いつくばった奴が生き残る時代 道あけてもらっていーすか?』(宝島社)には、こんな飾らない等身大の言葉が多く記されている。

 それは前述のNHK番組の中で、シンガポールで出張カットをしたシーンからもうかがい知れた。現地のお客さんとの意思の疎通において、極力通訳を介さずに、自分の英語で話そうとしていたのだ。

 計画して→動いて→チェックして→改善して→行動する
 レベル高すぎ!!!
 オレの場合は
感じて動く
(本書より引用)

 最後の「感じて動く」は実際には、本人直筆の手書き文字があしらわれている。また、ページによっては斬新な文字配置をするなど、自分の思いを伝えるためのさまざまな工夫が施されている。

 そんな高木氏の言葉や生きざまに多くの人が共感するのは、どん底を何度も経験しているからだろう。そして、ひたすら自分の努力によって自分を変えて成功し、かつ、いまだに努力を続け、さらなる高みを目指しているその姿に加え、言葉の悪さとは裏腹に、どんな人に対しても「感謝の思い」を忘れない、そのギャップ萌えもまた氏の大きな人間として魅力なのである。

 人生インパクト。
 俺が言いたかったのは
 あんたの名前の「旗を揚げろ」

 手書き文字混じりのこんな言葉で締められた本書には、「読み返したときにその時々の自分の状態によって受け取り方が違って思えるような言葉」の数々が記されているという。

 さて、今のあなたには高木氏のどんな言葉が刺さるだろうか。そして数年後には、どんな変化が起こっているだろうか。ぜひ本書で、そんな楽しみ方をしてみてほしい。

文=町田光