ゲイのサラリーマンと雷神さまの同居生活。ほのぼのしたやりとりに癒される…! 『雷神とリーマン』

マンガ

更新日:2019/6/29

『雷神とリーマン』(RENA/リブレ出版)

『雷神とリーマン』(RENA/リブレ出版)は、ゲイのサラリーマンと雷神さまの同居生活を描く人気作品だ。

 失恋を機に恋愛から遠のき、気力なく毎日を送るサラリーマンの大村。彼はゲイで、周りには隠している。見た目もよく、仕事熱心で、いい年齢。周りから「早く嫁さんもらえよ」なんて言われるたびに複雑な気持ちを持て余す。

 そんな大村は、ある日帰宅すると、部屋の中にふわふわと浮かぶ不審者を発見。驚く大村に、彼は口を開く。

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「聞け人間 我が名は雷遊 人間たちに雷神と呼ばれている存在だ」
「だが少々長生きしすぎてな 神でいるのが嫌になった だから人間になろうと思う」
「天啓と思え お前 俺を人間にしろ」

 仕事で疲れて帰って来たら、明らかにやばいやつに遭遇してしまった大村。しかし、雷遊の力を目の当たりにし、信じざるを得ない。そして、雷遊は、自分を人間にする代わりに、大村に満足を与えてやろう、という。どうすれば人間になれるのかわからない今、とにかく雷遊は大村とともに暮らし、虚しく生きる彼の近くで人生を満たすことを約束するのだった。

 とんでもない物語の始まりに一瞬置いていかれそうになるが、この日から始まるふたりの生活は、とても初々しくてほのぼのとしたものだ。なにしろ、雷遊は人間が生まれる前から生きているが、人間世界の文化はまるで知らない。おにぎりを初めて食べて、その美味しさに興奮したり、汗をかいてみたいと言ってスポーツジムに行ってみたり、学校に通い友達ができたり。私たちが普段何気なく過ごす日々を、雷遊はとても新鮮に驚き楽しむ。そんな彼の姿に大村も心満たされ、トゲトゲした心がなめらかになっていく。

 ジャンルでいえばBLになるが、そこで描かれるのは男ふたりの生活、そのものだ。雷遊は「カップル」という言葉すら知らないどころか「寂しい」という感情すら味わったことがない。大村が出張で家に帰らなかった夜、雷遊はいつもより広いベッドで初めて寂しさを感じる。ふたりの親密度はどんどん上がっていくが、そう簡単に恋愛には発展しない。

 最も大きな理由は、雷遊が「自分の子孫をほしい」と思っていることだろう。男神であり、おそらく人間になったら男になると思われる雷遊が、自分の子供を作り歴史に残していきたいという。もともと雷遊のルックスがタイプの大村は、ずっと彼の一挙一動にドキドキしているが、自分が雷遊とくっつくということは、彼の夢を妨げることにもなる。だから大村は決して積極的な行動には出ない。

 加えて、どんどん人間らしくなっていく雷遊は、大村が人間であり命に限りがある存在だということに折に触れ気づき、寂しさに不安を抱くようになる。ふたりで飼い始めた金魚の片割れが早々に死んでしまったとき、生物の命がこれほど儚いものなのか、ということを知る。

 男性同士の恋愛における世間の目に加えて、男同士では実現できない夢、そして人間と神だからこそリミットを感じる命。物語は終始ほのぼのとしているが、時折挟まれるそういった切なさに胸がしめつけられる。

 これは神様のいたずらと言っていいのかわからないが、とにかく偶然が重なり合い巡り合ったふたり。男同士で、神様と人間。ずっとこんな楽しい日々が続けばいいのにと思いながら、そうはいかないことも薄々感じ始める。

 第4巻まで発売しており、第4章まで終わった当作品。果たしてふたりはどのような未来を歩むのか、どうか幸せであってほしいと祈りながら次巻を待っている。

文=園田菜々