大人が涙する! 少年時代に戻れる「ゆるふわ昆虫図鑑」作家の絵本デビュー作

文芸・カルチャー

2019/7/6

『すごい虫ずかん ぞうきばやしをのぞいたら』(じゅえき太郎:作、須田研司:監修/KADOKAWA)

 夏になると、昆虫たちに会いたくなるのはなぜだろう。大人になると、どこか心が汚れてしまった自分に気が付くのも事実。小学生の頃、カブトムシやクワガタをひと目見たいと思いながら純粋に、がむしゃらに藪の中を駆け回っていた当時の自分にふと会いたくなる瞬間もある。

 そこで紹介したいのが、ツイッターの「ゆるふわ昆虫図鑑」で人気の作家・じゅえき太郎さんが描いた絵本『すごい虫ずかん ぞうきばやしをのぞいたら』(須田研司:監修/KADOKAWA)だ。子どもたちが学べるのはもちろん、ノスタルジックな気分に浸りたい大人たちの心にも響く温かい一冊となっている。

■ページをめくると虫取り網を手にした“少年時代”に戻れる

 ひとたびページをめくると、じゅえきさんの描いた青空から始まる本書。実在の山をモデルにしているため、全編を通して「どの季節に、どの虫が棲んでいるか」が分かるように構成されているというが、読むとまるで自分が少年時代に戻ったかのような思いに駆られる。

 半袖のシャツに半ズボン、麦わら帽子をかぶり片手には虫取り網を持った“心の中の自分”はまるであの頃のまま。「ぞうきばやしに はいった とたん― わぁ むしが けんかしてる!」という一節と共に、カブトムシとクワガタが面と向かってけん制し合う光景が描かれているが、昆虫界のヒーローたちが競演するさまにワクワクを隠しきれなくなる。

■脚や関節の角度などにもこだわった力作のイラスト

 昆虫の生態についても学べる本書の制作過程では、監修・須田研司さんから「飛んでいる虫の脚や関節の正しい角度はこうだよ」とじゅえきさんが指摘される場面があったり、イラストを描き込むがあまり編集担当者が締め切り間際にあえなく回収したりと、それぞれのこだわりが垣間見えたという。

 じゅえきさんの絵本デビュー作となる一冊でもあり、かなりの力作であるのはページごとに伝わってくるが、なかでも強烈だったのは藪の向こうから3匹のスズメバチがこちらに向かって来襲してくる一枚だ。

 青空の下で「ブ~ン」という音が聞こえたかと思いきや、向こうからやってきたスズメバチたち。ついつい巣の近くに寄ってしまったことから“敵意”を持たれてしまったようだが、鋭い目つきに屈強な顎、攻撃の要としておしりに毒針を持つ昆虫界きっての“ヒール役”たちの鬼気迫る姿は、すぐさま逃げ出したくなるほどだ。

 さて、ページをめくるたびに涙が込み上げてきそうになるのは、きっと自分が大人になったからだろう。年齢を重ねるにつれて刺激はだんだんと薄くなっていくが、少年時代の気持ちを取り戻せる本書を、ぜひ手に取ってもらいたい。

文=カネコシュウヘイ

●夏の特別企画展!「ロクト大昆虫展2019」開催!!
期間:
 7月13日(土)~9月1日(日)
 ※7月16日(火)は休館、7月17日(水)~19日(金)は閉場
時間:
 9:30~17:00(※8月は17:30まで)
場所:
 多摩六都科学館
 〒188-0014 東京都西東京市芝久保町5-10-64
入館料:
 大人500円、小人(4歳~高校生)200円
◆展示構成
・昆虫標本展示(約2200点予定)
・昆虫生体展示(約10点予定)
・昆虫についての解説パネル展示
・昆虫の雑学紹介(約12種予定)
・じゅえき太郎昆虫画展示
・四季の昆虫写真展示
・カブト&クワガタ タッチコーナー(ヘラクレスオオカブト・ニジイロクワガタほか)
・関連ワークショップ(昆虫ぬり絵、昆虫顔出しパネルで記念撮影)
協 力:
むさしの自然史研究会、じゅえき太郎、株式会社 実業之日本社、株式会社KADOKAWA、有限会社 むし社(順不同)
8月25日( 日) には、「じゅえき太郎の昆虫スケッチ教室」も。
詳細はこちら

『すごい虫ずかん』書誌ページ

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