彼氏いない歴=年齢だった友人が見合い結婚! 焦って婚活をスタートした34歳独身女性の運命は…?

文芸・カルチャー

2019/6/30

『人生のピース』(朝比奈あすか/双葉社)

 女友達の「幸せ報告」に心がざわついたことはないだろうか? 結婚や妊娠、出産の報告を受けた時に、置いて行かれたような気分になったり、自分の将来が不安になったり…。筆者は、自分の人生がまったく上手くいっていない時の幸せ報告は、「おめでとう」の一言でさえ、絞り出すのが大変だったこともある。多様な選択肢がある現代。「自分は自分」と言い聞かせても、身近な人の幸せ報告は、気持ちが錯綜するのが正直なところだ。

 朝比奈あすか先生の『人生のピース』(双葉社)は、そんな複雑な女性の心理と葛藤を、実に赤裸々に描いた小説だ。

 主人公は、食品メーカーの広報部で働く大林潤子・34歳。彼女には、都心にあるプロテスタント系の女子校で、中高6年間を共に過ごした仲の良い友人、みさ緒と礼香がいる。働く独身同士で気楽な付き合いだったものの、ある日、「彼氏いない歴=年齢」だった礼香が、見合い結婚することになった。オタクだが美人の礼香の結婚相手は、バツイチの医者。

 友人の結婚に動揺した潤子は、2人には何も告げず、衝動的に結婚相談所に入会。気合をいれて婚活の日々を送る。みさ緒も、長年同棲していたダメ男との関係を解消し、マンション購入を検討する。

 潤子は、自分たちの行動には「既視感」があり、「どこかで聞いた30代のフィクション」だと感じながらも、地道に婚活を続ける。しかし、3人の運命は思いがけない方向へ転がり出して――!?

 本書は、冷静に読むのが困難なほど、30代女性の心の内がリアルに綴られている。例えば、主人公の潤子。彼女は偶然にも、勤務先の、推定年齢45歳の独身美魔女の先輩が、匿名でツイッターをしていることを知ってしまう。そこには、社内の営業部長と不倫していることを匂わす内容が綴られていた。潤子は密かに彼女のツイッターを覗き続け、「年下の自分の方がマシだ」と思い、優越感を抱くことでほっとしていた。

 また、潤子だけでなく、みさ緒や礼香も、近しい関係だからこそ、お互いに言えない秘密を抱えている。最後まで読み進めると、会話だけでは読み取れなかったそれぞれの実態にギョッとした。

 潤子は、100人を超える異性と出会ったことで、自身のさまざまな本心に気づく。説明がしやすい「主婦」という立場がほしいと思っていたこと。30代半ばともなると、結婚が周囲から「まとも」に見られるための義務にもなっていたこと。胸がときめく居心地の良い男性は、自分で決めた「まとも」や「メリット」とは関係ないこと――。

 そして、苦労や理不尽も多くあった全ての経験を、「みんなみんな自分の人生に欠かすことのできないピース」だと認められるまでになっていくのだから、アラサー女性の一見「ありがち」な葛藤も、悪いことばかりではないと勇気がわいた。いや、本当は「ありがち」なことなんてひとつもないのかもしれない。それぞれに悩み苦しみ抜いて出した結論は、自分だけのオリジナルストーリーだ。自分の本心としっかり向き合い、前へ踏み出そうと励まされる物語である。

文=さゆ