問題シーン続出! 話題の作品がついにアニメ化!『荒ぶる季節の乙女どもよ。』

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公開日:2019/7/5

ネタバレ注意!荒ぶる「かつて」の乙女どもよ。座談会

 思いかえすだけで「わー!」と叫びたくなることばかりの荒ぶる10代を通りぬけ、かつての乙女たちは本作を読んでなにを思うのか? 20~30代の女性陣が、マンガを囲んで座談会。大人になった今も、本作に心を揺さぶられてしまうその理由とは。

A 20代編集者。元文芸部所属。
B 30代。元教員で、保健体育担当。
C 20代大学生。マンガ好き。
D 30代ライター。女子校出身。

 

A 読んでると、けっこういたたまれない気分になるんですよね。自分の中高時代を思い出して。

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B でも、おもしろい。性がテーマとは聞いていたけど、もう少しオブラートに包んでいるかと思いきや、かなり赤裸裸に語られている。特に1・2巻で描かれる戸惑いや葛藤に、ぐいぐい引き込まれて読みました。

C 実際の女子高生もこんな感じですか?

B そうですね。女子は男子に比べて性的な興味をもつのが遅いけど、授業で性感染症について教え始める中3くらいから意識が高まり始める。特に高1くらいがいちばん不安定で敏感なんじゃないでしょうか。

D 和紗が「お母さんは処女じゃないんだな……」って思う場面が1巻にありますけど、私もまさに同じことを考えたのを思い出しました(笑)。

A あった、あった! セックスの結果自分が生まれた、っていう事実に戸惑うんですよね。私が生まれた頃は祖父母と同居していたので、それなりに大きい兄も寝ていた同じ屋根の下で、二人はそういうことをしたのか……って。当たり前といえば当たり前なんだけど、なんだか気持ち悪い気もしてしまって。

C 高校の頃、Aさんみたいにショックを受けて泣いちゃった友達がいるんですけど、実は私は、あんまり考えたことがなくて。そういうもんだろうって思ってたから、和紗たちはピュアでかわいいなあって(笑)。ただ、自分がそういうことをすると考えたとき、好奇心と恐怖がないまぜになった感覚は覚えてる。だから和紗が泉の自慰を目撃してしまったシーンは衝撃でした。私だったらその後、恋心を自覚するどころか、二度と口もきけなくなる。

D 和紗もショックだっただろうけど、大人になった今は、泉の気持ちを思うといたたまれない……。

A 同僚の男性は、自分だったら自殺しかねないほどショックだって言ってました。家族に痕跡が見つかるだけでも死にたくなるのに、って。

荒ぶる季節の乙女どもよ。コマ
座談会出席者全員がいちばん衝撃を受けた本シーン。このときばかりは和紗ではなく、全員が泉に共感……。

B 男子のほうが、身体的な事情で性の目覚めがはやいけど、女子は想像がつきにくいぶん、どうしても構えてしまう。その差異の描かれ方もすごくリアルだなと思いました。

D 曾根崎部長みたいに過剰な潔癖さを発揮する女子はいましたしね。中高女子校だったせいか性を自覚する必要がなく、もーちん(百々子)みたいにぽやんとしたまま卒業する子も。そういう意味で、閉鎖された文芸部は女子校っぽいんだけど、日常には普通に男子がいる。そりゃあ荒ぶるだろうなと思います(笑)。

A 私はまさに文芸部で、部長が曾根崎さんみたいな人でした。卒業式のボタンのやりとりなんて汚らわしいわ!って言ってたし。

B でも、そういう人に限って……。

A そうなんです。文芸部で書くものも意外とエログロが多くて。軽蔑は好奇心の裏返しで、禁じれば禁じるほど尊いものにもなってしまう、ってことを読んでいて思いました。だから、「えすいばつ」なんてすばらしい隠語ができてしまう。

C 部内で、率先して話題にあげているのも意外と部長ですしね。しかも真っ先に恋に落ちて、誰より変わっていってしまう。

D 好きになってくれる天城くんがいい子すぎて感動する。二人にはこのままピュアに関係を育んでほしい。和紗と泉のほうが不穏だから……。

A 和紗ってすごくいい子だけど、私、読んでいてけっこうイライラするんですよ。恋のライバルになった菅原氏とぎくしゃくし始めると、もーちんにばかり相談して、ああだこうだと一人で考えるじゃないですか。本当にどうにかしたいなら、本人と話し合えばいいのに、って。それは菅原氏も同じなんだけど。

B 中学生の女子は友達に対する独占欲が強くて、グループの棲み分けがしっかりしてるんですけど、高校生になるとみんな、少しずつ個人を尊重し始めるんですよ。だから逆に、センシティブな問題が起きたときに踏み込みづらくなるのかもしれない。

C 私は菅原氏が苦手ですね。かわいくて性格もよくて賢くて、友達にいたら自慢だけど、好きな人には絶対紹介したくない(笑)。でも同時に、すごく共感する部分もある。私も高校生のとき、自分は平凡で何もないけど“制服を着ている”ことで絶対的な価値を与えられていると思っていて。卒業するのがすごく怖かった。だから彼女の「美しい少女のまま死にたい」って気持ちは、すごくわかる。

D 菅原氏は、好意を向けられることに慣れてるし、唯一、自分の性に自覚的ですよね。いじわるな見方をすると、泉のことが気になり始めたのは、和紗の目線に同調したのもあるけど、彼が菅原氏を好きにならなかったからじゃないかという気もします。もともと子供の頃に、いちばん好きな人からは選んでもらえなかったというトラウマを持っているし。

荒ぶる季節の乙女どもよ。コマ
泉を誘惑する「執着」モードの菅原氏。本能と理性のせめぎあいの中、泉が選ぶのはどの道だ!?

C 泉へのアプローチは、和紗へのマウントでもありますよね。

B 菅原氏と本郷先輩は、教員としてはまず、家庭環境を気にしちゃいます。根本的な自己肯定感が二人とも低い気がして。和紗は、けっこう親と密にコミュニケーションをとるじゃないですか。もーちんと部長も、なんとなく両親との関係が想像できる。でもあの二人は、親に心を開いていなさそうな感じがするんですよね。

D 菅原氏は劇団、先輩は小説家志望、というところで、評価される場に立たされているのも大きいかも。同じもの書く身としては、編集者に「童貞のおっさんの妄想?」なんて笑われたらそれこそ死にたくなる……。「私には恋愛より仕事」って思うことで自尊心を保てるのに、それもできない。だから、取材のために顧問のミロ先生と関係をもとうと暴走する気持ちはすごくよくわかるな。性で自己肯定感を獲得しようとしている点でも、二人は対比的かも。

A でも、当たり前だけど拒絶されて。「女としての自分には価値がないのかも」っていう自信の喪失は、大人になった今のほうが刺さります。あと私はもーちんがいちばん心配。男から理想を押しつけられ、上から目線で接せられがちな女子は、今後こじれていく可能性が高いから。

B この先、どうなるんでしょう。誰が最初に、えすいばつをしてしまうのか。泉と菅原氏が関係をもってしまったらいやだなあ……。

荒ぶる季節の乙女どもよ。コマ
執筆能力向上のために、ミロ先生に迫る本郷先輩。しかしその裏にはミロ先生への恋心が隠されていて……。

D だけど、書いているのが岡田麿里さんだから……。『心が叫びたがってるんだ。』でエグられた身としては、とことんまで描ききってくれることを恐れつつ期待しています。「恋愛はただ性欲の詩的表現をうけたものである」って芥川が言っているけど、その狭間で揺れるのは10代だけじゃないから。

A 全ての美しい気持ちはえすいばつに辿りつく。その結論を彼女たちが貫けるのかどうか。できれば全員、こじれた男子たちも含めて幸せになってほしいですね。

ここを見てくれ!一押しシーン!

荒ぶる季節の乙女どもよ。コマ

荒ぶる季節の乙女どもよ。コマ

荒ぶる季節の乙女どもよ。コマ

荒ぶる季節の乙女どもよ。コマ

(C)岡田麿里・絵本奈央/講談社