全国125箇所の水族館を写真付きで総チェック! 水族館プロデューサーが評価するアナタ向けのスポットは?

エンタメ

公開日:2019/7/6

『全館訪問取材 中村元の全国水族館ガイド125』(中村元/講談社)

 大人になるにつれて、経験が邪魔をしてかだんだんと感動が薄くなってくる。しかし、子どもの頃のようなワクワク感を取り戻せる場所も少なからずあり、海の生きものたちの姿を間近で味わえる“水族館”はその代表格だろう。

 趣向を凝らしたスポットが全国各地で注目されているが、数あるガイドブックの中でも『全館訪問取材 中村元の全国水族館ガイド125』(中村元/講談社)は水族館ファンならずとも必携の1冊だろう。池袋・サンシャイン水族館のリニューアルなどを手がけてきた水族館プロデューサーによる本書は見応えもじゅうぶんで、写真満載の内容を読めばきっと誰かと、あるいはひとりでも足を運びたくなるはずだ。

■池袋・サンシャイン水族館は“天空のオアシス”としてリニューアル

 近年ではテーマ性を強調した水族館が目立つが、著者はそのテーマをとらえる指標のひとつとして、みずからの造語である「水塊(すいかい)」という言葉を頻繁に用いる。その言葉が示すのは「水中感や浮遊感、水中世界の存在感など、人々が水槽そのものに惹きつけられる要素」であるが、そういった魅力を最大限に発揮する、工夫を凝らしたスポットが各所で誕生している。

advertisement

 東京・池袋にある老舗のサンシャイン水族館もその流れを汲むひとつ。2017年に「その名の通りサンシャイン(=心地よい陽光)をまとった新たな天空のオアシス」として、リニューアルを果たした。

 テーマにある“天空のオアシス”を象徴するのが、天井に現実の空を映し出す開放感溢れる“水塊”を泳ぐペンギンやアシカたち。他にも、コバルトブルーの海を再現した「サンゴ礁の海」や世界各国の陸地に棲む水生生物のエリアなどもある。

 著者は館内の様子を「大人は大人の感性のままでも、十分に潤いと癒やしと元気を得、子どもは子どもで驚きの水中世界を見つけられる」と表現している。

■日本海に臨むおたる水族館は“日本一豪快”なスポット

 豊富な海の幸に恵まれたイメージのある北海道。港町・小樽市にあるおたる水族館は、「日本一豪快な水族館」と称されている。

 目玉は、日本海に臨む海岸風景をそのまま水族館の一部として取り込んだ「海獣公園」と呼ばれるエリア。巨大なトドたちが岩の上からダイブし、ゴマフアザラシたちは客からエサをもらうため自分たちのパフォーマンスを繰り広げるなど、自然の地形を活かしたショーが楽しめるのだ。

 建物の構造として「入ったとたんに、どこにいるのか分からなくなってしまう巨大迷路のような導線」も魅力だと著者は述べるが、厳しい寒さの続く冬にも、地の利を活かした醍醐味を味わえるスポットだ。

■貴重な生態系に触れる有明海唯一のむつごろう水族館

 大規模な水族館が日本各地で人気を集める一方で、小規模ながらに、地方ならではの生きものを間近で楽しめるスポットもある。長崎県諫早市にあるむつごろう水族館は、有明海唯一の水族館だ。

 日本最大の干潟があることでも知られる有明海。むつごろう水族館では干潟の生きものをはじめ、諫早を流れる本明川の源流や有明海に至るまでの川に生息する生きものなどが、大規模な環境再現水槽内で展示されている。

 なかでも見どころは、施設名称にもあるムツゴロウで、著者は「シャイな性格で、じっと待っていると、水中から顔を出してくる」と紹介。さらに、エイリアンのような顔を持つワラスボも観察することができ、他のスポットでは見られない貴重な生きものたちに会うことができる。

 さて、本書を“ただのガイドブック”と思うなかれ。ひとたびページをめくっていくと、写真からその施設内の風景に引き込まれ、不思議とさまざまな水族館へ足を運びたくなる。まずは自分に身近なスポットから、あるいは旅行や帰省先のスポットで、お気に入りの施設を探してみてほしい。

文=カネコシュウヘイ