ヤンキー漫画とBL漫画が見事な融合! 「笑いもシリアスも絶妙なさじ加減!」男ふたりの同居生活ストーリー
更新日:2019/7/26
『頂き!成り上がり飯』や『アキラNo.2』などのヤンキー作品で知られる奥嶋ひろまさ先生が、まさかのBL作品に参加したというから驚きだ。
その作品とは、『同棲ヤンキー 赤松セブン』(SHOOWA:原作、奥嶋ひろまさ:漫画/秋田書店)。
と言う訳で、「同棲ヤンキー赤松セブン」よろしくお願いします。僕も親友と3年くらい同棲してたし、これも運命かもな。今の不安はshoowaさんもカチコミも僕をフォローしてくれてない事だけだ‼︎
奥嶋ひろまさ先生(@HiromasaOkujima)2018年3月2日Twitterより
ちなみに原作は「イベリコ豚」シリーズで知られるBL作家のSHOOWA先生だ。第1巻には、SHOOWA先生が初期段階に描いたキャラクターの絵も収録されており、こちらはこちらでまた味わい深い。
家を出て一人暮らしをする主人公の赤松は、思春期特有の悶々とした気持ちを持て余しながら生活を送っていた。
そんな彼の目にとまったのが、なぜか公園で暮らしている神崎という男だ。頑丈な肉体をもっている神崎に対して赤松は一方的にタイマンを仕掛け、行き場のない衝動を拳にこめて神崎に殴りかかる。圧倒的に弱い赤松はいつも早々に返り討ちにあってしまうが、神崎から殴られたあとはどこかスッキリしたような表情を浮かべている。
ある日、雨の中いつも通りタイマンをしたあと、汚れた服のまま去ろうとする神崎に赤松の「洗濯機かしてやる」という一言でふたりの同居生活が始まることとなる。
読み始めは、作画も展開も王道のヤンキー漫画を読んでいるような印象。ちょっと頭の弱い赤松と器のでかい神崎の平和な日常生活が描かれている。一つ屋根の下、一緒に風邪を引いて寝込んだり、コインランドリーで洗濯をしている間にショッピングモールで買い物をしたり。一緒にお風呂に入ったり(?)。
たまに神崎の距離感無視の提案(「一緒に湯船に浸かろう」とか「勃ったなら抜いてあげるよ」など)をスルーすれば、男同士のまったりとした同居コメディだ。
しかし、物語が進むにつれて、設定に対しての謎が嫌でも気になってくる。
なぜ赤松は高校生なのにひとりでアパートに暮らしているのか?
なぜ神崎は帰る家すらなく公園の土管に暮らしているのか?
そして、その謎が解き明かされていくにつれて、この作品の様相はまるで変わってくるから鳥肌ものだ。そういう意味で、第1巻は最後まで読んだあとにもう一度読み返したくなる、二度美味しい巻であった。
あまり語るとネタバレになるので控えるが、「ヤンキー漫画だと思っていたらやっぱりBL漫画だったわ!」と気づく瞬間が確かにあり、その流れが本当に秀逸だ、ということくらいは言っておきたい。THEヤンキー漫画な作画で、抜き合い描写が見れることもとにかくうれしいし興奮する。
今後、今巻ではあまり触れられなかった神崎の謎についても解き明かされるのだろう。果たしてふたりの同居生活、そして関係性はどのような道を辿るのか。奥嶋先生の描く秀逸なヤンキーの表情や美しい絵も含めて、とにかくこれからが楽しみなBL作品だ。
文=園田菜々
この記事で紹介した書籍ほか


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