日本人の6人に1人が「貧困」時代――安易な絶望に陥らない方法はあるのか?

社会

2019/7/12

『絶望しないための貧困学ルポ 自己責任と向き合う支援の現場』(大西連/ポプラ社)

 今、日本人の6人に1人が「相対的貧困状態」にあるといわれている。相対的貧困とは、その国の中で相対的に「貧困」とされる状態を指すが、具体的には国民一人ひとりを所得順に並べた時の中央値の半分に満たない層のこと。日本では年収122万円(月に使えるお金が約10万円)以下の人たちが相対的貧困層に当たり、2015年時点でその比率は15.7%と年々増加傾向。国際的に見てもOECD加盟国の中で高い割合となっている。

 6人に1人ということは、1クラス30人の教室ならその中に5人は貧困状態の人がいるということだ。「僕たちと貧困を隔てる壁は、限りなく薄く、もろく、そして見えづらくなっています」と、貧困問題に取り組む認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやいの理事長である大西連さんも著書『絶望しないための貧困学ルポ 自己責任と向き合う支援の現場』(ポプラ社)で訴える。

 大西さんによれば貧困に陥ったほとんどの人は「みんなと同じように生活し、学校に通い、スーパーで買い物し、テレビを見て笑っていた人」であり、それがある日、病気や怪我、親の介護などの理由で働けなくなり、気がつけば貧困という穴に落ちてしまうのが現実だという。

 実際、本書にはホームレス支援活動の中で大西さんが出会った様々な貧困状態にある人々姿が描かれているが、特殊な事情を抱えた人もいるものの、大半は「自分もそうならない可能性はない」と思える人であることに驚かされる。自力ではどうにもならず、生活が追い込まれたらどうなってしまうのか……彼らの焦りはもはや他人事ではない。そしてそんな時、大西さんら支援者がいてくれることに心からほっとする。

 大西さんたち支援者がやっているのは、炊き出しや夜回りなどのほか、相談会などを通じて支援を求めている人を「フクシ」(生活保護のこと)に繋げていくことだ。臆する彼らに付き添って役所の相談窓口に出向き、役所に「保護する義務」を訴えながら、できるだけ理想の支援が実現するよう根気よく働きかけていくのだという。ともすれば世間からからバッシングされやすい「生活保護」という制度ではあるが、これだけ貧困が身近になった社会においては、暮らしを守るための大事なセーフティネットであることは間違いない。むしろ、いつ私たちにとっても「“絶望しないため”の命綱」になるかわからないと再認識したほうがよさそうだ。

 本書には友人に誘われて炊き出しボランティアに参加して以来、「自分は何をやってるんだろう?」と迷いながらも、なぜかボランティアをやめられなくなってしまった大西さんの気持ちの変遷が、飾らない素直な言葉で綴られている。思い上がった気持ちを反省したり、勉強不足から手痛く失敗して後悔したり、支援に助けられた人を心から祝福したり……大上段に構えて「福祉」の必要性を叫ぶのではなく、途方もない現実を前に戸惑う自分を正直に吐露する姿が印象的だ。その等身大の眼差しは、なかなか生活困窮者支援の現場に入っていく勇気は持てなくても、今困ってしまっている人たちのことを「隣人」として知ろうとする気持ちを持つことがスタートになるのだと、優しく背中を押してくれる。

 これから私たちの社会が大切にしていかなければいけないことは何なのか。参院選が近づく今だからこそ、幸せな未来のために一人ひとりが考えるべきことは多い。この本もまた、大事なヒントを与えてくれる一冊なのは間違いない。

文=荒井理恵