“普通”の大学生が風俗やパパ活に勤しむ現状。東京の女性たちに何が起こっているのか?

社会

2019/7/16

『東京貧困女子。 彼女たちはなぜ躓いたのか』(中村淳彦/東洋経済新報社)

「パパ活」という妙な言葉が、一般世間にすっかりと浸透した。『東京貧困女子。 彼女たちはなぜ躓いたのか』(中村淳彦/東洋経済新報社)は、「パパ活」(一般女性が金銭を受け取り、食事やデートやそれ以上の行為をすること)ならびにアダルト関連や介護などで貧困に直面する女性の声をまとめ、東洋経済オンラインで1億2000万PVを獲得した人気連載をまとめたものである。PV数の高さからも、老後不安も含めた貧困問題への注目度の高さがわかるだろう。

 著者の中村淳彦氏は、大学卒業後にひょんなことから手伝うことになったアダルト雑誌でアダルトライターとして長年活動したのち、出版不況のためアダルトライターを引退、介護の事業所を立ち上げている。本書には、アダルト、介護と貧困にまつわる当事者と密接に関わってきた著者だからこそ知り得る、貧困に喘ぐ女性の叫びがこだましている。

 ここで描かれるのは、20歳前半の女子大生から50代のシングルマザーまで、幅広い年代の貧困女子たちだ。本書に登場する女性たちは、一貫して普通で、たとえば、クレジットカードでのブランド品購入やギャンブル、ホスト通いといった負の要素を背負っていないのが悲しいところである。みんな真面目で、不器用で、そして運にも見放されている。ちょっとしたきっかけをはずみに、貧困から抜け出すことができないまま、精神を病み、結婚に失敗し、家族とうまくいかず、体までも蝕まれていく。

 ひと昔前までは、風俗で働くのはたくさん稼いでホストクラブで遊びたい場合や、のっぴきならない借金に苦しむ女性がほとんどだった。しかし、現在では風俗やアダルトに価格破壊がおき、一般的な大学生が授業料のために風俗やパパ活に勤しんでいるという悲しい現状が語られる。もはや風俗は最後の砦ではなくなった。

 本書では、女性たちの悲痛な叫びとともに、今の日本では普通に生きるということすら難しい現状が浮かび上がってくる。介護事業所を経営していた著者の「これから死にゆくだけの老人のために、若者の未来が搾取されていく現状はいかなるものか」との意見には反論のしようがない。

 家族が最後のセーフティネットだと著者は語る。しかし、人間関係が希薄になった現代社会では、家族を頼ることができない人があまりにも多い。介護やアダルト関連には貧困が横たわっているというのは非常に興味深い問題だ。人間の最期を看取る介護も、性を扱うアダルトも、本来なら家族や夫婦などの関係の中で行われるべき事柄である。その2つに金銭を介して対処するしかないという現状が、人間関係の薄さやそれこそ、「愛」の欠如ではないかと思えてならない。

「これからの日本はどうしようもない気がする」とも著者は何度も本書で語っている。確かにそうなのかもしれない。けれど、人と人の間にはやはり、「愛」があるのではないだろうか。あまりにも悲しい女性たちの行く末に、一筋の光が差し込むことを祈るばかりである。

 重たい内容ではあるが、決して目をそむけられない現実がここにあり、なめらかな筆致とともに一気に読めてしまう。時流もあいまって、貧困問題を書き続けてきた著者の集大成ともいえる一冊だ。

文=ナガソクミコ