無自覚な“まじめ系毒親”の存在ーー「心配性」と「過干渉」が子どもの「毒」になる!

社会

更新日:2020/9/1

『気づけない毒親』(高橋リエ/毎日新聞出版)

「毒親」とは、「子どもにとって毒になる親」という意味である。そんな「毒親」から過去にひどい仕打ちを受けたというエピソードは数多く存在する。「毒親」の代表的なイメージは「虐待」や「育児放棄」だろう。「毒親」と呼ばれる親は、誰が見ても「ひどい」「子どもを愛していない」とわかる行動を取る。

 しかし、そんな「毒親」のイメージを覆すのが『気づけない毒親』(高橋リエ/毎日新聞出版)である。カウンセラーの著者はこう語る。

“(毒親は)けっして、見るからに「ひどい親」という意味ではありません。むしろ、まじめで、一生懸命な、ちゃんとした人たちが多いのです。他人からは「いい人」と思われていることが多いし、自分でも「いい親だ」と思っていることも多いです。それなのに、子どもにとって「毒」になってしまうことがある──そこが、この問題の、やっかいなところなのですね”

「虐待」「育児放棄」とは真逆に思える「まじめな毒親」の存在とはどういうものだろうか。本稿では彼らのことを仮に「まじめ系毒親」と呼ぶことにするが、そんな「まじめ系毒親」たちが子どもに与える「毒」とは「強い不安」のことだという。彼らの特徴は「心配性」と「過干渉」である。著者はこう付け加える。

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“「ええっ、そんな親、そこらじゅうにいるじゃない!」と思ったでしょうか? 親なら誰でも、子どものことを心配します。そして「よかれと思って」干渉します。それをやりすぎると、「毒」になるのですね。”

 彼らは、子どもを社会で生き抜く強い大人にさせるために「競争に勝たせなければならない」「怠けさせてはならない」「道から外れさせてはいけない」といった強迫観念を持つ。「もっとがんばりなさい」と口うるさく言ったり、自分の想定外のことを子どもがしようとするとやめさせたりする。本書は彼らを「不安が強く、強迫観念から子どもをコントロールしがちで、子どもの気持ちを思いやれない親」と定義する。

 彼らが親子バトルをひきおこす要因は以下の3つだ。

・親が何でも「正論」で返してしまう
・親が世間体を優先している
・親の強迫観念を押し付けている

 子どもが「学校がつらい」と言うと、彼らは子どもの「つらさ」はすっ飛ばして「どうしてそんなことになったの?」「あなたも悪いんじゃないの」「こうすればいいじゃない」などと言ってしまう。また彼らは「自分がいい親として認められたい」といった思いから子どもの気持ちを無視して世間体を選ぶ。「〜でないといけない」という価値観を子どもに押し付け「これはダメ!」「あれもダメ!」と言ってしまう。

 実は、今の思春期の子どもたちを育てている昭和生まれの親たちは、まだ戦後の教育の価値観を持っていることが多い。それは「強くないと生きられない」というものである。「まじめ系毒親」は自分のそんな強迫観念が子どもを押さえつけてしまっていることに気づき、自分の心にある不安を優しく見つめることが必要だろう。親子のあいだにある見えない呪縛の正体を、本書を通じて多くの世代にぜひ知ってほしい。

文=ジョセート