残念な空耳ソングを卒業!「仰げば尊し和菓子のON」「アルプス一万尺、子ヤギの上で」

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公開日:2019/7/19

『仰げば尊し、和菓子のON? ああ、勘違い……。』(髙﨑康史/ベストブック)

 多くの人にとっては遠い昔のことかもしれないが、私たちは義務教育中に多くのことを頭に詰め込んできた。小中学校で教わる国語、算数、理科、社会、英語といった基本の5教科や音楽、美術などはどれも基本的な内容ばかりだが、中には、分かったつもりで実はよく分かっていないものや、勘違いをしたまま覚えているものもある。『仰げば尊し、和菓子のON? ああ、勘違い……。』(髙﨑康史/ベストブック)は、“多くの人が分かっているつもりで実はよく分かっていないこと”をまとめた1冊だ。

 学校のテストは、穴埋め問題や公式を覚えるような“丸覚え形式”がほとんどだった。そのため、問題を解く中で湧き上がってきた「なぜ?」という疑問は解決されにくい。本書はそうした疑問に答えを与え、好奇心旺盛な大人の心をワクワクさせてくれる。読後のあなたは、数年越しに知ることができた「トリビア」を、きっと誰かに話したくなるはずだ。

■割り算はどうして分母と分子をひっくり返すの?

「どうして割り算をするときは、分母と分子をひっくり返さないといけないの?」
先日、筆者は甥っ子にそう問われ戸惑い、なんだか感慨深い気持ちになった。自分が小さな頃には抱かなかった“ピュアな疑問”が新鮮に思えたのだ。割り算の仕方を子どもに教えられる大人は多いが、数学が得意でも、この疑問に明快に答えられる人は少ないだろう。本書はこんな難しい問いにも、丁寧な答えを与えてくれる。

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 割り算は、「計算を進めていくと逆数のかけ算に置き換わる」という性質を持っている。例えば、分母と分子をひっくり返さず2/5÷3/4を計算していくと、不思議なことに2/5×4/3になるのだ(詳しくはぜひ本書の解説を参照されたい)。

 私たちが「問答無用!」とただ丸暗記してきた割り算の仕方は、面倒な計算過程を省くための作業だったのだ。「割り算は、とにかくひっくり返して計算すればいい」と教える大人は多いだろうが、その裏にある「なぜ?」にも耳を傾けられたら、学力以外の力も伸ばしていけそうだ。印象深く記憶にも残り、もっと知りたいという好奇心を呼び覚ます。

 こうしたトリビアを子どもの頃や学生時代に教えてもらっていたら…、本書を読むとそう感じる人は多そうだ。

■「♪アルプス一万尺」を正しく歌える?

 子どもの頃、よく耳にしたはずの童謡が記憶の中でいつの間にか曖昧になっていることは多い。小学校低学年の頃の音楽の授業では、歌詞がほとんどひらがなで記された教科書を使用しているため、歌詞を勘違いして覚えていることも…。

「アルプス一万尺」の覚え間違えは、ポピュラーなもののひとつだろう。冒頭を「アルプス一万尺、子ヤギの上で…」と歌ったことがある方は、みなさんの中にもいるはず。これは間違いで、正しくは「子ヤギ」ではなく「小槍」の上。

 そして、この曲で歌われているアルプスとは、ヨーロッパのアルプス山脈ではなく、日本の北アルプス(飛騨山脈)のこと。「小槍」とは、槍ヶ岳の頂上付近にある、小さく突き出た峰のことだという。

 こうやって「小槍」が何なのかを知ると、一気に曲の情景も想像しやすくなる。アルペン踊りに付き合わされるかわいそうな子ヤギを妄想しなくてもよくなるだろう…。

 本書には他にも「君が代」や「浦島太郎」、「赤い靴」といった誰もが知っている童謡の正しい歌詞も記されている。自分の記憶に自信がある方はその答え合わせを、もし不安があるという方はこれを機に、“空耳ソング”を卒業してみよう。

 子どもの頃の自分にちゃんとした「答え」を与えてあげられるのが、本書の醍醐味。全28講にわたる“学習トリビア”は、あなたの知性を若々しくよみがえらせてくれるだろう。

文=古川諭香