シュールなギャグと過激なプレイの融合に混乱する…。大ヒットBL『恋するインテリジェンス』の魔力

マンガ

更新日:2019/7/19

『恋するインテリジェンス』(丹下道/幻冬舎コミックス)

 めちゃくちゃ笑えるのに、めちゃくちゃもだえる。意味がわからないんだけど、なんかすごく胸にクるものがある。そういう読後感を得られる至上のBLがある。

 現在第6巻まで発売されている、丹下道著『恋するインテリジェンス』(幻冬舎コミックス)だ。物語の舞台は、N国外務省にある国際情報統括官組織。そこは諜報活動を主に行う特殊情報収集(インテリジェンス)組織である。…という設定だけだと、小難しい世界観に敬遠してしまう人もいるかもしれないが、ちょっと待ってほしい。この作品の肝は、組織の活動の一環である「色仕掛け任務」にある。

 入省した男性分析官は「男役」と「女役」に分かれ、2人1組のバディとして活動を行う。要は、スパイ活動として女役がターゲットに色仕掛けを行い、そのサポートを男役が行う、という仕組みだ。そして、その色仕掛け任務を遂行するため、彼らは極秘に特訓(第二種特殊諜報活動実習)を行っている。

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 その色仕掛けの特訓がとにかくエロい。部屋のアナウンスで流れてくる実習司令本部からの指示に従うのだが、それが「ベッドに仰向けになり膝を立てて足を開いてください」とか、それ必要? みたいなツッコミどころだらけの指示がくだる。色仕掛けの特訓というより、手順に沿ってセックスをしているだけである。

 そんなエリート官僚たちの、ちょっと特殊でエッチな日常が描かれる当作品。物語が進むにつれて登場人物は増えていき、第1巻のメインキャラクターである針生篤と戸堂眞御カップルの他、財務省につとめる志山円と主計局勤務の同僚・土門統英、外務省勤務の深津秀一と武笠亮吾、財務省関税局課長の差形怜司とひとつ年下で同省主計局課長の古賀親國…などさまざまなカップルが登場し、さまざまな人間模様を見せる。

 設定の性質上、ひとりひとりの職務や任務内容、組織の構造など、とにかく情報量が多いわけだが、それに加えてツッコミどころ満載のエッチな展開とシュールなギャグ(?)が怒涛のように押し寄せてくるため、とにかく1冊の満足度が高い。

 プレイも、一辺倒ではなく、毎回ちょっとアブノーマルなものが入ってくるので毎回新鮮な気持ちで「今回はどんなエッチな展開が…」とウキウキしながら読んでいる。

 ロマンチックを突き抜けた言葉の数々は、もはや笑ってしまうレベルに濃いのだが、それすらもクセになってしまう。

(C)丹下道,幻冬舎コミックス

 エッチでおばかでとにかくラブラブ。そのクセの強さに読む人を選ぶかもしれないが、一度ハマったら絶対に抜け出せない素晴らしい沼BLである。

文=園田菜々