人気デュオ「ゆず」の北川悠仁が漫画家に!? マスコットキャラクター「ゆずマン」が生き生きと動き出す!

マンガ

公開日:2019/7/28

『まいんち ゆずマン』(北川悠仁/集英社)

「栄光の架橋」「虹」など数々のヒット曲を生み出したフォークデュオ「ゆず」。近年はスマホゲームの『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』に楽曲を提供するなど、活動の幅を広げている。そんな「ゆず」のリーダーである北川悠仁氏が、なんと漫画家としてデビュー! 「ゆず」のマスコットキャラクター「ゆずマン」が活躍する4コマ漫画がウェブで公開され、このたび『まいんち ゆずマン』(北川悠仁/集英社)として単行本化された。

 この作品は「正義の味方」を目指す「ゆずマン(5歳)」の、家族や友人たちと過ごす「まいんち(毎日)」を描いたもの。頭に「ゆず」の被り物をしたゆずマンは元気な子供で、友人の「キウイくん」たちといつも楽しく遊んでいる。「正義の味方」を目指しているとはいっても悪人が現れたり大事件が起こったりするわけではなく、せいぜいゆずマンが悪のボス認定している、校長先生の「みかづきマン」が登場する程度である。基本的にはファミリー向けテレビアニメに近いテイストで、平和な日常が展開していくのだ。

 本書では漫画のほか、インタビュー記事も掲載されているのだが、その顔ぶれがスゴイ。コミックス累計発行部数4億5000万部を誇る人気漫画『ONE PIECE』の作者・尾田栄一郎氏と、40年にわたって週刊連載された『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の作者・秋本治氏なのである。

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 まず尾田氏は、「他ジャンルの有名な方が漫画を描くの、すごく賛成だし、歓迎したいんです」と北川氏の漫画家デビューを評価。そして北川氏の「泣けるシーンは読者を泣かせにいっていますか?」という質問に、尾田氏はそのための演出はしているとした上で「僕はそのシーンを描くために、読者の倍ぐらい泣いています。自分が泣けない漫画で、人を泣かすことはできないと思っている」と語る。北川氏も曲作りなど「自分が楽しいかどうかが、もっとも信頼できる基準」であるとし、その共通点を感じていた。

 そして秋本治氏は、北川氏の漫画を非常に評価する。秋本氏はまず、キャラクターの設定がしっかりしていることを指摘。「こういうシンプルな作風って、真似するのは簡単でも、ゼロから作るのには特別な才能がいる」のだという。そして氏は、構図がキャラクターの目の位置でキープされている点にも言及。視点をキープすると読みやすくなるという、プロならではの評価といえる。さらにセリフを3行以内に抑えている部分の評価は、北川氏の担当編集も「セリフ回しは最初から完璧だった」と一致している。これは作詞をしているから可能なのだという分析だが、音楽活動と漫画家稼業は意外と共通点が多いのかもしれない。

 北川氏にとって漫画家は「小さい頃、ミュージシャンじゃなくて漫画家になりたかった」という幼少の夢。それを実現した氏は、さぞ感慨深いであろう。尾田氏によれば漫画とは「描きたいものを描きたいように描き、それを完成させれば、それはもう漫画」であるという。評価すべきは北川氏が『ゆずマン』を漫画として、キチンと完成させたところなのかもしれない。「まずはやってみて、しっかり完成させること」──北川氏の漫画家への挑戦は、我々にそれを教えてくれているように思える。

文=木谷誠