稲川淳二さんに学ぶ相手の心をグッと引き寄せるための“会話術”とは?

暮らし

2019/7/27

稲川淳二の恐いほど人の心をつかむ話し方 心に残る、響く、愛されるための38の方法』(稲川淳二/ユサブル)

 誰もが一度は聞いたことがあるどころか、おそらく“モノマネ”したことがない人はいないんじゃないかと思える稲川淳二さんならではの語り口。27年も続く「怪談ナイトツアー」をはじめ、恐い話はもはや一種の様式美ともいえるが、そのノウハウを凝縮した著書『稲川淳二の恐いほど人の心をつかむ話し方 心に残る、響く、愛されるための38の方法』(ユサブル)が書店に並んでいた。

 なぜか伝わるという“稲川流”のトークスキルをヒントにすれば、必ずや多くの人たちの心をグッと引き寄せられるはずだ。

■恐い話し方だけではダメ? 肝心なのは“話に色を付ける”工夫

 稲川さんの代名詞ともいえる、恐い話。その独特な語り口は、誰もがきっとたやすく思い浮かべられるはずだ。「変だな~、変だな~」「おかしいな~、おかしいな~」とすぐさまフレーズが脳内に蘇ってくるほどだが、意外にも「会話の内容に話し方を合わせすぎない」とコツを伝える。

 恒例のイベント「怪談ナイト」には参考にしようと放送局のアナウンサーも足を運ぶという。「恐いぞ、恐いぞという雰囲気を無理につくっている」こともあると述べる稲川さん。「楽しげな空気や笑いを挟んだり、微妙な間をこしらえたり、聞いている人をぬけられない恐さに追い込んでいくような『恐い状況』をつくらないといけない」と心得を説く。

 日常会話にもあてはまり、大切なのは「話そうとする内容や目的をいろいろな角度から見て色を付けてみる」という工夫。相手を説得したい、何かを頼みたい、喜ばせたいなど、目的ばかりに気持ちをとらわれ過ぎず、緩急やギャップを作る意識も相手に伝える上では必須ということだろう。

■言葉で先走るべからず。思い浮かんだ“絵”を言葉で追うのがコツ

 相手の心を動かすのは「けっして上手い話ではありません」と説く稲川さん。はた目からみればじゅうぶん過ぎるほど“上手いなぁ”と感心させられるが、大切なのは「絵をつくりながらそれを追う」という意識だと述べる。

 そもそも話というのは「言葉が先走ると、どうしても計算してつくっている感じが強くなってしまう」と指摘する稲川さんだが、恐い話では「頭のなかに情景をおもい浮かべ映画のように展開している」という。状況に応じて効果音を交えるのも一つの方法で、擬音は「聞いている人がイメージをつくりやすい」ため、臨場感が増して聞き手がまるでその場に立っているかのような気持ちになる。

 そこにないはずの“絵”を想像しながら相手へ語りかければ、印象もガラッと変わるはずだ。

■誰かとの会話は自分自身の“会話力”を磨く絶好のチャンス

 相手に伝わる話し方は、一朝一夕で身につけられるものではない。ときには誰かをヒントにするのも一つの方法で、稲川さんは「街でいろいろな人と話すこと」が会話力を磨くチャンスにも繋がると述べる。

 病院の受付やタクシー内、商店街の店舗など、あらゆる場面で恐い話を披露する機会がしばしばあると語る稲川さん。誰もが認めるほど“話しのプロ”としての地位を確立している今でも、誰かとの会話から「変化球やクセ球を打ち返すよう」に意識して研さんに励んでいるという。

 たくさんの人と接すると、会話が上手な人やぎこちない人、テンポが速い人や遅い人などじつに多種多様な人たちがいて、話しているうちに「ノミや槌をもってこちらの会話力を彫ってくれる」と稲川さんはいう。会話力だけではなく、人間観察力を身につけることにもきっと役立つ。

 さて、稲川さんが“話し方を説く”というテーマだけでもすでに、心をつかまれた一冊。本書からヒントを得れば、営業トークやプレゼンなど、日々の仕事においても必ずやスキルアップが図れるはずだ。

文=カネコシュウヘイ