友達以上恋人未満がザワつく「フラート」って何? ライムスター宇多丸も絶賛のNEO恋バナ!

恋愛・結婚

2019/7/27

『モテとか愛され以外の恋愛のすべて』(桃山商事/イースト・プレス)

 あなたは最近、恋バナを誰かとしただろうか。私はというと、周囲の友人は既婚・子持ちが多く、恋バナがあるとすれば不倫話になるが、不倫の相談を恋バナと言ってしまうのはちょっと違うような気がする。恋バナはいくつになっても聞くのも語るのも楽しいもので、それをしたい気持ちはやまやまだ。

『モテとか愛され以外の恋愛のすべて』(桃山商事/イースト・プレス)は、そんな恋バナ欲を満たすのにうってつけの一書だろう。著者である「桃山商事」は、清田隆之氏(代表)、森田雄飛氏(専務)、ワッコ氏(係長)という3名のメンバーで構成された恋バナ収集ユニットだ。本書はWebメディア「cakes」に連載されたコラムを1冊にまとめたもの――というとあっさりしているが、もともと彼らがWebラジオで語ったテーマについてニコニコ生放送で再度語り直し、それを文章に起こしているという手間のかかったものである。

 そもそも恋バナの醍醐味とはなんだろう。複数の価値観や経験を持った人たちがワイワイお互いの体験をもとに語り合うところに大きな魅力があることは確かだ。清田代表は恋バナを収集する活動の中で得た感覚をこう記している。

たとえば思わぬ発見があり、脳が一気に活性化する(=ユリイカ!)。また、誰かの体験と自分の体験が共鳴し、深いわかりみが発生する(=コミュニケーション・オーガズム)。おしゃべりをしているだけで刺激やときめきや癒しが得られると思うと……恋バナって結構すごくないですか?

 こうした恋バナの魅力を、紙上で体験できるのが本書なのである。ただし、この中で語られているのは、タイトルの通り「モテや愛され」以外のもの。いわゆる恋バナにありがちな、「どうしたらもっとモテるようになるか」「片思いの相手との距離の詰め方」「脈アリ脈ナシ」といったメインストリームの話題ではなく、とても断片的で個人的な、しかし誰もが経験したことがあるような恋愛の話題が中心となっている。そうした今まであまり注目されてこなかったトピックも含めた恋バナが本書でいうところの“NEO恋バナ”というわけだ。

 たとえば「恋愛と遊び」の項目では、デートで水族館に行くとかテーマパークに行くとかという大きなくくりでの遊びではなく、恋人同士や夫婦間でしか通じないじゃれ合いが取り上げられている。たとえば「通りすがりの知らない犬に名前をつけて遊ぶ」というような、そのカップルの間だけで成立する非常に閉じたやりとりのことだ。はたから見たら意味がわからないし、当人たちも特に意味があるとは思っていない、でも、楽しい。ただ、そうした“遊び”をするためには「信頼関係や共通の足場が必要」(森田専務)。話はそこから、セックスでの興奮と遊びは同居できるのか、というところに展開していく。

 そして、私がもっとも本書で“NEO恋バナ”を感じたのが「フラート」の概念だ。

友達以上恋人未満の相手とふと手をつないでみたり、合コンの最中に気になった人と視線と視線を交わし合ったり……そういう、いっときの戯れなやり取りを示す言葉が「フラート」です。

 フラートは、それがたとえば恋愛に発展するステップなどではなく、「相手とのやりとりやその瞬間のドキドキ自体を楽しむという感覚のこと」だそう。ワッコ係長がそれを端的に表現した言葉が「ザワ」である。ここでは、同窓会で昔好きだった人を駅まで送る流れになり、改札でキスをして別れそのままあとは連絡も取り合わず、という清田代表の高度なフラートエピソードが公開されている。森田専務やワッコ係長と同じフラート弱者側にいる私からすると、かなりハードルの高い概念ではあるが、まったくわからないわけでもない。確かにそういう感覚はあるし、それが何気ない日常のちょっとした潤いになることもあるだろう。

 上記以外にも、「恋愛と食事」「恋愛とお金」「恋愛遺産」などさまざまな本書の恋バナエピソードを、これからの恋愛がよりよいものになるように参考にするもよし、桃山商事の一員となった気持ちで「わかりみが深い~!」と楽しむもよし。他愛なかったり、とても感覚的だったりするエピソードに、人と人とがコミュニケーションをする繊細さや複雑さが垣間見える。そこからかえって自分の弱点や指向なども見えてくるところが、NEO恋バナの奥深さだろう。

文=本宮丈子