架空の戦場を想定した戦場サバイバルマニュアル。自衛隊の戦闘訓練教官が生き延びる術を教えます!!

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2019/8/3

『民間人のための戦場行動マニュアル: もしも戦争に巻き込まれたらこうやって生きのびる』(S&T OUTCOMES、危機管理リーダー教育協会 川口拓/誠文堂新光社)

 日本が韓国に対して経済制裁を発動したというニュースが流れたが、よくよく調べてみると優遇措置を撤廃し、特定の物資の輸出を2004年頃と同じ通常の基準で検査するというだけだった。輸出した物資が第三国に渡って武器の製造に使われるのを防ぐ安全保障上の措置であり、比喩として「戦争」と付く経済戦争とは別次元の、本物の戦争を回避するために政府が水面下の戦いをしているという訳だ。では、もしも本物の戦争に巻き込まれたら私たち民間人はどうやって生き延びるのか。グローバル化によって戦争が国家間のものだけではなくなり、テロや暴動なども想定される現代においては、『民間人のための戦場行動マニュアル: もしも戦争に巻き込まれたらこうやって生きのびる』(S&T OUTCOMES、危機管理リーダー教育協会 川口拓/誠文堂新光社)を読んでおく必要があるだろう。

 災害時におけるサバイバル術と本書が大きく違うのは、救助を要請するために目立つ行動をするのではなく、敵から逃亡し身を潜め、時には敵と対峙することを想定している点だ。ただし、自衛隊でサバイバル及び戦闘訓練教官を務めた著者自身は、一度も戦地に赴いたことはないという。それでは頼りないと思う読者もいるかもしれないが、実際に機能する危機管理術は「誰にでもできる、簡単でカジュアル」でなければならないと述べている。確かに、専門技術や難しい知識を必要として日頃から訓練をしないと実践できないような内容では、本書を読む意味すら無くなる。

 だから、敵と戦うなどというのは最後の手段。いや、銃器の取り扱い方も書いてはあるが、あくまで救助されるまで生き延びるのが最優先課題だ。そのためにまず準備しておくのは地図、それも紙の地図だという。インターネットが使えなくなる可能性があるからで、自宅周辺、会社や学校周辺、通勤通学の道程などの地図を参考に、弾道ミサイルの警報が鳴った際はもちろん敵が攻めてきたときに逃げ込める場所や、水が手に入りそうな公園、怪我をしたときに治療を受けられそうな病院などを確認しておこう。

 アメリカには攻撃に遭遇したときの基本的な指標があり、それは「RUN(走る)」「HIDE(隠れる)」「FIGHT(戦う)」の3つとのこと。脅威から早く離れ、武装している人間の視界に入らないようにし、そのどちらもできない場合に初めて戦うという選択になる。しかし、もし銃を突きつけられた場合は、相手にはすぐに殺さない目的があるかもしれないから、無抵抗で降伏するのが生存率を高めるので、恐怖にかられて無分別な行動をするのは避けたい。このときに気をつけなければならないのは、素早い動きは禁物。財布や身分証を取り出すにしても、手を上げて抵抗しない意思を示しつつ、どんな行動をするつもりか先に相手に告げてから行なうようにする。

 敵に襲われ捕虜にされたのなら、とりあえず生き延びることができたのだから運が良いかもしれない。だが著者は心構えとして「期待しない」「後悔しない」ことで厳しい扱いに耐え、精神の安定を保ち、そのうえで「無駄な抵抗はしない」「状況把握に努める」「いつかくるチャンスに備え怪我をしない」よう勧めている。

 他にも本書では、爆発する場所があらかじめ分かるときには爆心地に足を向けてうつ伏せになり、衝撃波を軽減するために目を閉じて両耳を塞ぐとか、物陰から観察する際には頭だけ出すと頭の丸みで人だと分かってしまうため、腕などを組み合わせて人らしくないシルエットを作るといった、戦闘状況に特化した生き抜く技術が網羅されているから、しっかりと頭に入れておこう。有事には読者全員が無事に生き残れるよう、健闘を祈る。

文=清水銀嶺