若き日の思い出は「映画」と共に! 胸に残る名作の数々を語りつくそう

エンタメ

2019/8/22

『昭和こどもゴールデン映画劇場』(初見健一/大空出版)

 新海誠監督の映画最新作『天気の子』が2019年7月に公開された。夏休み中は多くの子供たちが映画館へ足を運ぶであろうし、映画に対する感動など、その思い出は胸に刻まれることだろう。このように、おそらくは誰の胸にも「思い出の映画」というものは存在するはず。『昭和こどもゴールデン映画劇場』(初見健一/大空出版)には、映画好きの著者・初見健一氏が昭和の時代に体験したさまざまな映画の「思い出」が詰まっている。

 本書は著者が小学生だった70年代から昭和の終わりである1989年頃までの間で、特に印象に残った映画について小学生、中学生、高校生と時代を分けて書き綴っている。当然ながら、同時代を生きた人とそうでない人では、本書に対する感想は大きく異なるだろう。そこに個人的嗜好が加わるなら、なおさらである。しかし時代というものを俯瞰してみると、意外と話題が共有可能な「映画」もそれなりに存在するのだ。なのでここでは、本書で取り上げられている映画から一般的に共有しやすそうな作品をピックアップして、当時著者が何を感じていたのかを見てみたい。

●『燃えよドラゴン』

 映画のタイトルは聞いたことがなくても、主演である「ブルース・リー」の名は多くの人が知っているだろう。あるいは「考えるな、感じろ」などの名言が思い浮かぶという向きもあるかもしれない。本書ではこのブルース・リーという存在について、「『人』とは呼び難いような現実的存在を超えた『なにか』」だと述懐。その感覚については、少し理解できる気がする。というのも、この映画が公開された1973年12月時点において、すでにブルース・リーはこの世の人ではなかったからだ。しかも32歳という若さでの急逝であり、当然ながらさまざまな憶測も流れることになる。著者の周囲でも「まだ生きている」など情報は錯綜していたといい、私の周囲も似たようなものだった。そして本人不在の中、日本では空前の「カンフー・ブーム」が到来し、ブルース・リー主演の過去作が次々と上映されていったのである。著者のいう「いるのかいないのかがわからない存在」というのは、当時の感覚をよく表していると思う。スクリーンで活躍するブルース・リーは、まさしく実体のない「精神的」な存在だった。だからこそ今でも「伝説的存在」として語られるのだろう。

●『スター・ウォーズ(エピソード4 新たなる希望)』

 現在はシリーズが体系化され「エピソード4」となっているが、最初に製作された『スター・ウォーズ』がこの作品である。著者は本作を「ポップカルチャー全体を『構造改革』してしまうようなものだった」と、その衝撃について語っているが、確かに公開当初からその影響は凄まじかった。特に「『スター・ウォーズ』以前にはほとんど見られなかった『関連グッズの販売』という新しいビジネスモデルの『発明』によって巨大な市場が創出」されたと著者がいうように、誰も彼もが「C-3PO」や「R2-D2」といったキャラクターなどのグッズを買い求めていたものである。現在においても「スター・ウォーズ」シリーズの関連グッズ市場は巨大であり、このことひとつを取ってみても、本作が「時代」に与えた影響は計り知れないものがあるといえよう。

 最近は「映画館離れ」が叫ばれて久しい状況だが、人生というものを振り返ってみるとき、その節目節目で思い出されるのは「映画」というケースも多い。特に多感な少年時代には、「親と一緒に観た映画」などは楽しかった思い出としていつまでも記憶されるはずだ。本書は著者・初見氏のいわば「青春日記」みたいなものだが、そういうことができるのも映画を観ていればこそ。DVDなどで観るのもよいが、やはり映画館でのみ感じられる「リアルタイム感」も捨てがたいのである。

文=木谷誠