牛乳を買うとき棚の奥から取ってない? 食品ロスを大量に生む「残念な消費生活」とは

社会

2019/8/9

『大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実』(仲村和代、藤田さつき/光文社)

 毎年節分のシーズンにコンビニやスーパーの棚に並ぶ大量の恵方巻き。もはやおなじみの光景だが、さすがにやりすぎだと感じる人は多いはずだ。売れ残ったものは大量に廃棄されているとも聞く。しかし、あれはどこか一部の業者が勝手に作り、勝手に大量入荷して、勝手に廃棄しているだけの話なのだろうか…?

『大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実』(仲村和代、藤田さつき/光文社)は、著者である2人の新聞記者が、食品や洋服の大量廃棄が行われている実態と背景へと迫るルポルタージュである。これは、特定の業界における内輪の問題を扱った本ではない。本書が目を向けるのは、洋服を買い、コンビニやスーパーで食べ物を買う人々――つまり、私たちの日常生活との関係だ。

 著者らは、食品業界で働くさまざまな人や識者への取材によって、食品の大量廃棄の背景を描こうと試みる。「恵方巻き」はあくまでも廃棄の一例だ。食品ロスは常時起こっているという。

■牛乳や豆腐を買うとき棚の奥から取っていないだろうか?

 本書は、大量廃棄が常態化している現状を、「消費者の意識」の反映だと分析する。たとえば、スーパーで買い物をするときに、賞味期限まで長い商品を求めて棚の奥に手をのばしたことがある人は多いだろう。実は、こうした消費者の欲求が、「3分の1ルール」と呼ばれる食品業界の習慣を成り立たせてきた。このルールは、製造日から賞味期限までの期間を3つに区切り、「最初の3分の1までに店舗に納品できなければ返品・廃棄になる」というかなり厳しい規則だ。

 あるいは、おにぎりやパンの棚を見て、これだけしか数がないのか…と感じたことはないだろうか。だが、自分が買いきれないほどの商品が陳列されていることがいったいどれほど切実な問題だろうか、と本書は問う。品切れは残念かもしれないが、大抵すぐに忘れてしまうし、他のもので代用がきくことも多い。しかし、消費者の不満を少しでも減らすため、売る側は努力を積み重ねてきた。廃棄が出るとわかりつつ、多めに用意しておくのである。そして結果的に大量の食品ロスが発生する。

■食品の大量廃棄はどうすればなくしていける?

 では、この問題を解決するためにどうすればいいのだろうか。本書は、具体的に行われているエピソードを通じて、大量廃棄社会から抜け出すためのヒントを探る。

 広島のあるパン屋では、毎日長時間かけて100点満点のパン作りを目指すのをやめ、「70点、80点でも4、5時間でできるならいい」と考え直した。素材が良質なら、時間や手間はさほどかけなくてもおいしいパンができるという。「楽に働きたい」という思いが、パンを捨てなくてもいい売り方を考える余裕にもつながったそうだ。ネットの定期購入サービスなどを開始しつつ、2015年夏以来パンを1個も捨てていないという。

「食品ロスを減らそう」と気負いすぎることも、負担になる。そもそも大量廃棄の現状が教えてくれたのは、「無茶な努力を続けると、どこかでほころびが生じる」ということのはずだ。無理のない持続可能な生活を目指し、その結果としてロスが減っていけば「理想的」ではないか、と本書は提案する。

■今日食べたもの、今着ているものについてどれくらい知っているか?

 本書は大きく3パートに分かれている。第1部は、高速サイクルで生産され捨てられる洋服をテーマにしている。第2部は食品業界の話。そして第3部は消費のスタイルに変化を与えつつあるメルカリなどを例に、消費者間で生まれている新しい動きを追う。

「たくさん作って、たくさん買って、たくさん捨てる」――そんな状況を生んだ一因は私たちの消費のあり方だ。ならば、消費から大量廃棄社会を変えることもできるだろう。その意味で、消費はクリエイティブだと本書は述べる。私たちは日頃手にする食品や服が、どう作られ、捨てられていくのかをほとんど知らない。本書は目の前にある「モノ」との付き合い方を見つめ直すきっかけとなるはずだ。

文=岡田正樹