通り過ぎるだけではもったいない! 高速ジャンクションと橋梁の圧倒的な美しさを存分に味わうガイドブック

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更新日:2019/12/27

『高速ジャンクション&橋梁の鑑賞法』(首都高速道路株式会社・阪神高速道路株式会社ほか:監修/講談社)

 各方面へと縦横無尽に伸びる高速道路の分岐を担う「ジャンクション」。その高架が立体的に折り重なるその造形美、方ぼうへ道路が伸びる周辺の景観などに心奪われる人たちは多い。

 そんなジャンクションの魅力を存分に詰め込み、機能美の楽しみ方をわかりやすく解説するのが、タイトルもズバリの『高速ジャンクション&橋梁の鑑賞法』(首都高速道路株式会社・阪神高速道路株式会社ほか:監修/講談社)だ。ちょうどこれから長期休暇の旅行や帰省ラッシュが重なる時期であるが、ジャンクションや橋梁をただ通り過ぎるだけではなく、下から見上げてみたくなるようなロマンを掻き立てる1冊だ。

■ジャンクション鑑賞に役立つ6つのおすすめポイント

 ジャンクションとひとくちにいっても味わい方、つまり鑑賞の仕方はさまざまだ。本書では、今まで特別な視点でジャンクションを見たことがなかったという人にとっても鑑賞するときに役立つ“6つのポイント”が紹介されている。

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 醍醐味といえるのはやはり、各方面へ向かう道路が重なり合う「立体交差」だ。そして、いくつもの方向に分かれた道路が合流する「分岐点」もみどころ。本書では、撮影などでは「正面から見ることができるのが理想的」と解説されているので、ぜひその説明を参考に、ここぞという鑑賞スポットを探してみたい。

 さらに、分岐点へ向かう緩急の付いたカーブから生まれる「曲線」の美しさもジャンクションならではの魅力。たくさんの大型車も行き交う高速道路を支える“縁の下の力持ち”である「橋脚」も、環境や条件によりさまざまな個性をもっている。

 非常階段や落橋防止装置などの「パーツ・付属設備」や、ジャンクションの周辺にある「背景」とどう馴染んでいるかを味わうのも建造物を鑑賞する際の楽しみ方のひとつ。さまざまな角度から眺めてみれば、これまで気づかなかった新しい発見もきっとありそうだ。

■ヤマタノオロチのような迫力が魅力の「箱崎ジャンクション」(東京)

 東日本や西日本にある有数の高速ジャンクションを取り上げる本書。そのひとつとして紹介されているのが「大都会に現れたヤマタノオロチ」の異名を取る、首都高の「箱崎ジャンクション」である。

 ドライバーにとっては渋滞の名所としても知られる、箱崎ジャンクション。しかし、鑑賞するファンからは「ジャンクション界の王様」としてあがめられているという。首都高速6号向島線・9号深川線を形作る6本の道路が分岐する構造は改めて見ると複雑怪奇で、その光景はまさに8つの頭を持つ神話の生物“ヤマタノオロチ”のよう。ビルの間を縫うようにたくさんの橋梁が密集するさまは、過密した都市部ならではの光景でもある。

 また、頭上から順に視線を下に向けてみると、全国でも類をみない「ジャンクション、ロータリー、一般道」からなる3層構造ができあがっているのも特徴。東京メトロ・半蔵門線の水天宮前駅から徒歩0分と好立地で、付近にあるT-CAT(東京シティエアターミナル)へと続く歩道橋から見れば、背面の模様や防音壁などの細かなパーツも間近で鑑賞できる。

■遊歩道から“静”を味わえる「りんくうジャンクション」(大阪)

 大阪府泉佐野市を通る「りんくうジャンクション」は、さながら“静”のジャンクションと呼ぶべきスポット。本書では「静寂につつまれた幻想都市」とキャッチコピーが付けられている。

 関西空港自動車道と阪神高速4号湾岸線を接続するりんくうジャンクションは、シンプルな構造が特徴。北西部は海に面しており、見上げた道路の先には一面の空を眺められる好立地に建っているため、開放感溢れる空間で橋梁の“曲線美”を存分に堪能できる。

 りんくうジャンクションのみどころは、込み入った都市部とは異なる広い用地を活かした大きくゆるやかなカーブ。ジャンクションの下にあるりんくう公園の遊歩道から、じっくりと鑑賞してみるのがベストだ。細かな部分に目をやると、関西空港自動車道に設置された「Y型の中央にワイヤーを張っているタイプの照明」も特徴で、これは全国的にも数が少ないそうだ。

 さて、クルマで走っていると一瞬で通り過ぎてしまうジャンクションであるが、ひとたび下から眺めてみるとその独特な造形美を新しく発見することができる。さらに、本稿では詳しく紹介できなかったものの、本書では海や谷を渡るための“橋梁”についても同様にその魅力や楽しみ方がふんだんに解説されている。読んでみればきっと各スポットに足を運びたくなるはずだ。

文=カネコシュウヘイ