乱歩の愛好アイテムが勢揃いの怪奇探偵小説

小説・エッセイ

2012/5/7

【割引版】孤島の鬼

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 東京創元社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:eBookJapan
著者名:江戸川乱歩 価格:194円

※最新の価格はストアでご確認ください。

「孤島の鬼」を江戸川乱歩の最高傑作だという人もいます。

一つには、乱歩が愛した猟奇のアイテムがこの作品の中に集合しているからでしょう。密室殺人、凄惨な女性の死体、身体的フリークたちの跳梁、サーカス、迷路、美少年や同性愛などなど。このほかに、乱歩の十八番としてかろうじて欠けているものがあるとすれば、鏡と劇場型犯罪くらいのものです。

「孤島の鬼」は、その名のとおりとある孤島での、身の毛もよだつような犯罪と、緊迫した冒険活劇を大団円としますから、劇場型犯罪のような不特定多数へ向けた開かれた物語を導入することはむしろマイナスだったのでしょう。本編を彩るのは華麗に舞い散る犯罪劇の花びらでなく、先に記したような闇にうごめく反社会的なものへのなかばうしろめたい欲望。だからこそ深く私たちをとらえてはなさない、けばけばしく醜くて美しい夢のかけらたちなのです。

それらの、泥絵の具を塗りたくったような怪奇趣味のフラグメントが、渦を描いて戦慄のカノンを踊るのが「孤島の鬼」なのです。

禍々しい連続殺人と謎に満ちた探索行は、本作初出時に誌面を飾った、竹中英太郎による挿絵が復元されていて、いやが上にも雰囲気を盛り上げる趣向になっています。

また、構成が見事に立ち上がっていることも、いいもらすわけにはいかないでしょう。

これから恐ろしい事件の逐一をお話しします、という語り手の独白から始まって、不気味な密室殺人の顛末を述べ、やがてその事件の謎が解けるころには主要な人物が出そろい、彼らと語り手の関係がそれぞれ縁飾りのように主なる事件のまわりを飾って、小説全体に深みを与えるのです。また、中程にあらわれる女性の日記は、物語をさらにホップさせて謎めきを加速し、すべてのエピソードを見事に回収するラストへとつなげます。

言い忘れました、ボーイズラブものとしても、充分に楽しめるのでありました。


冒頭から乱歩独特のしなやかな文章に魅せられる

初めは密室事件を論理的に推理する本格のものスタイルでスタートする

かなりボーイズラブ

最初に殺されるのは恋人だ

挿絵が雰囲気を盛りたてる (C)平井隆太郎