スティーブ・ジョブズも実践していた! 上手にお願いごとをするための3つのポイント

ビジネス

公開日:2019/8/22

『人に頼む技術 コロンビア大学の嫌な顔されずに人を動かす科学』(ハイディ・グラント:著、児島修:訳/徳間書店)

 自分でまとめる人間が多くなるほど、人に頼む機会が増える。指示や命令であればかえって言いやすいかもしれない。「人に頼む」という行為は、ときに本人を不安にさせる。断られたらどうしよう…内心はどうだろう…貸しをつくってしまうことになるのでは…。人の上に立つほど、こういった不安とも付き合っていく必要がでてくる。

 コロンビア大学の心理学博士が最新科学をもとにまとめた『人に頼む技術 コロンビア大学の嫌な顔されずに人を動かす科学』(ハイディ・グラント:著、児島修:訳/徳間書店)によると、人に頼み事をするとき、良くない結果をどこかで想像しており、社会精神医学でいう「社会的痛み」を感じている。他者との関わりから生じる不快感である「社会的痛み」の処理は、筋肉のけいれんやつま先をモノにぶつけるなどの身体の痛みの処理と同様の方法が脳内でとられるという。それほどまでに、人にとって「頼む」という行為には苦痛が伴う。

 本書によると、多くの人は頼み方が下手だ。実は、人は何かを頼まれることを、それほど苦とはしない。むしろ、人に頼まれると「わざわざなにかをしてあげる」という行為と整合性をとるために、頼んできた相手のことをより好ましく思うようになる作用もある。本書のテクニックを実践していたという、かのスティーブ・ジョブズは、次の言葉を残している。

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僕は日常的に、助けを求めれば人はそれに応えてくれる、ということを実感している。この真実に気づいている人は少ない。なぜなら、めったに誰かに助けを求めようとしないからだ。

 しかし、これは「上手に頼まれた場合」だ。人が誰かを助けることで良い気分になるには、“自ら望んで”支援の手を差し伸べているという“主体性の感覚”が不可欠なのだ。例えば、誰かを助けるように指示されたり、誰かを助けなければならないと考えていたり、助ける以外に選択肢がないと感じていたりするような場合には、助けた側は「良い気分」になりにくい。具体的には、共感に頼りすぎたり、やたらと謝りながら頼んだり、楽しみ事の内容の楽しさや些細さを強調しすぎたり、借りを思い出させたりすることが挙げられている。

 本書は、頼み事を成功させる3つの方法を紹介している。1つ目は、「仲間意識」を活用すること。「一緒に」という言葉を意識して使ったり、互いの共通の経験や感情を交えたりしながら、「仲間意識」を生み出すとよい。

★上手に頼むためのポイント1:「一緒に」という言葉を使う

 2つ目は、「自尊心」を刺激すること。人は、「私は親切なことをした」と思うより、「私は親切な人である」と思えたときのほうが、自尊心が高く感じられる。依頼の際、あるいは助けられた後に感謝の言葉を伝えることで、相手の自尊心は高くなり、自分との関係が深まる。感謝の言葉を伝えるときは、「親切なことをしてくれたこと」にお礼を述べるのではなく、相手の親切心や寛大さ、無私の心など本人の特性や人間性に言及すると良さそうだ。

★上手に頼むためのポイント2:相手の親切心や寛大さ、無私の心など本人の特性や人間性に対する感謝を伝える

 3つ目は、「有効性」を感じさせること。人に頼む際は、相手が「自分の仕事(助け)で生じた影響を実感できる」ように仕向けることが肝要だ。そのためには、求めている助けの具体的な内容を事前に明確化しておいたり、フォローアップしたり、相手に好きな方法を選ばせたりする必要がある。

★上手に頼むためのポイント3:「自分の仕事でこんな良い結果になった」と実感してもらえる言葉を掛ける

 人によっては、3つの方法のうち、どれを選択しても助けてくれる場合もあれば、どれか1つは効果がない場合、またはどれか1つのみ効果がある場合、などさまざまある。自分の普段の頼み方を振り返ってみて、選択していない方法があれば、それを活用することで、頼み事の成功率がアップするかもしれない。

 人に頼む行為について、スティーブ・ジョブズは「何かを成し遂げる人と、夢を見るだけで終わる人との差になることもあるのではないかと思う」と述べている。人に頼むことが苦手な人だけでなく、高みを望む人にも必読の書といえそうだ。

文=ルートつつみ