マイクロソフト在籍時に謝罪訪問585回を経験! 「謝罪は最大のビジネスチャンス」の真意とは?

ビジネス

2019/8/26

『謝罪の極意 頭を下げて売上を上げるビジネスメソッド』(越川慎司/小学館)

 ボールペンを投げられても、首から下に飛んできた場合は避けない。もし避けると、相手はさらに腹を立てるからだ。

 数々の修羅場をくぐり抜けてきた人の体験談は、そのエピソードだけで面白いし、そこから得られる教訓も「なるほど!」と納得できるものばかりだ。

 上記のボールペンの話は『謝罪の極意 頭を下げて売上を上げるビジネスメソッド』(越川慎司/小学館)に登場したもの。著者は日本マイクロソフトの最高品質責任者(CQO)を務めた時代に、585回もの謝罪訪問を行った人物だ。

 謝罪訪問の現場では、名刺や書類を破られた経験も複数。訪問の当日朝になってから、同行予定者が「親戚の不幸」「インフルエンザ」等を理由に次々とドタキャンしてきたこともあったという。

 謝罪というのは、それだけ当事者にとってはイヤでイヤで仕方がなく、できるなら逃げたいものなのだ。しかし、その逃げたい心情や、「さっさと終わらせたい」という気持ちが行動に表れると、トラブルがさらに大きくなるケースもある。

 その例として本書で紹介されていたのが、「絶対に大丈夫です」「まもなく直ります」などと無理な断言や、できない約束をしてしまうこと。トラブルの発生時についつい言いがちなことだが、その約束も破ったとき、相手の怒りが倍増するのは火を見るよりも明らかだ。筆者も締切に遅れて怒られたとき、「あと1時間で送ります!」とできない約束をしがちなので、本当に注意したい……。

「初回の謝罪訪問での菓子折り持参」もNGの行動として挙げられていた。なぜダメなのかというと、相手側から「これで勘弁してください」という意味だと誤解されてしまうから。これも相手側の気持ちになると納得のいく話だ。

 その菓子折りを渡すタイミングについて、著者は「問題が解決した3回目の訪問時に」と提案する。その菓子折りは、迷惑をかけたお詫びと、「今後さらに関係を強化していきたい」という気持ちを込めたものだそうだ。

 著者にとって謝罪訪問は信頼回復の手段であると同時に、協業体制を深めるためのチャンスでもある。実際に謝罪訪問から追加契約に結びつけたケースもあり、著者がマイクロソフトを退社後に立ち上げた企業では、顧客の半分が以前に謝罪訪問した企業だという。

 誰もが逃げ出したくなり、パニックに陥ってしまうような謝罪の場面で、誠意や思いやりに溢れた建設的な対応ができる人は、一度失った信頼を何倍もの大きさで取り戻せるわけだ。

「頭を下げて売上を上げるビジネスメソッド」という書籍の副題からも分かるように、著者にとって謝罪とは、「最大のビジネスチャンス」。読者もそんな気持ちで謝罪に臨めれば、イヤでイヤで仕方なかった謝罪が「やりがいのある仕事」になり、自身の成長の機会にもできるはずだ。

文=古澤誠一郎