グロテスクな人食い金魚が出現! 渋谷の街が血に染まる、新感覚パニックホラー

マンガ

公開日:2019/8/25

『渋谷金魚』(蒼伊宏海/スクウェア・エニックス)

 水槽の中をゆらゆらと泳ぐ姿は、見る者を魅了するほど優雅だ。一説によれば、江戸時代には養殖が武士たちの副業ビジネスとなるほど人気が高かったのだそう。では、そんな愛らしい“あの魚”が人々を襲い始めたとしたら……?

『渋谷金魚』(蒼伊宏海/スクウェア・エニックス)の舞台は、日本を代表する若者の街・渋谷。3月3日12時50分、主人公の月夜田初(つきよだ・はじめ)は、いつもと同じ平凡で退屈な1日を過ごしていた。映画コンクールに提出する作品撮影のために馴染みのない“異世界の街”までやってきた月夜田は、大した収穫もなく意気消沈気味……。しかし、そんな彼にもラッキーが舞い降りた。ずっと憧れていた学校一の美少女、深草さんにバッタリ遭遇して一緒に食事をすることになったのだ。

 憧れていた女の子と、休日にデート――。

advertisement

 男子高校生の単調な日々がゆっくりと動き出した瞬間、変化の兆しは血生臭い匂いと奇妙な音によってあっという間に消え去った。コロンと転がってきた人間の頭部を、巨大な金魚がぐちゃぐちゃと喰い荒らし始めたのだ。

『渋谷金魚』は、人喰い金魚によるパニックホラー。次々に人を喰い殺す巨大な金魚と、未曽有の恐怖に立ち向かう人間の姿が描かれている。本作はかわいらしい書名からは想像ができないほど、グロテスクな描写が多い。なかでも、死体に大量の稚魚がまとわりついているシーンは不快感すら覚えるほど。しかし、この不快感こそがホラーマンガの醍醐味! ついつい怖いもの見たさでページをめくり、あっという間に読み終えてしまった。

「脱出中にスマホのアラームが鳴り響き、ビル中の金魚が目覚める」「自衛隊の救助ヘリが目の前で金魚に食べられる」など、1巻では人間たちの考えた決死の作戦がことごとく失敗に終わる。はたして、人間が一矢報いることはできるのだろうか。そして、金魚たちが呟く奇妙な言葉にはどのような意味が込められているのだろうか。自分なりの考察を楽しみながら、新感覚パニックホラーを読み進めてほしい。

文=山本杏奈