「文化勲章もらっても立ち小便で捕まりたい!」ビートたけしの頭の中は…!?

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公開日:2019/8/24

『「さみしさ」の研究』(ビートたけし/小学館)

「孤独」「老い」「死」…超高齢社会となり、世の中全体が袋小路に迷い込んでしまったような印象を受けることがある。その中で、終活や孤独を前向きにとらえる書籍が売れ行きを伸ばすなど、ポジティブな流れがあることも事実だ。昭和、平成、そして令和を迎え、人の価値観もだいぶ変わってきた。時代を駆け抜け、浅草の下積み時代を経て、お笑い界のトップのひとりとして、また、世界的映画監督として、さまざまな視点から世相を見てきた“この人”はどんな風に「今」を斬るのだろうか。

『「さみしさ」の研究』(ビートたけし/小学館)は、齢(よわい)70を迎えたビートたけしが昨今はやりの“孤独礼賛本”にあえて異議を呈し、「老い」や「孤独」は残酷なものだという考えのもと著したエッセイ。その構成は実にシンプルだ。

第1章 老い、孤独、そして独立について。
第2章 友の死、さみしいね。
第3章 ニッポン社会も老いている。

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 自身の所属事務所独立問題から、身近な人たちの死にいたるまでについて、イメージ通りの飾らない言葉で語っている。

■「終活ってのは、好きじゃない」毛嫌いするワケは?

 数年前からブームになり、今や定着した感もある「終活」。死んでいく自分、遺された人へのメッセージを記すエンディングノートなども売られるようになっている。しかし、著者は「終活」という言葉は自身の死生観とまるでそぐわないという。

“終活ってのは、すなわち「死のための準備」ということだろう。そんなことを考えるのは好きじゃない。「自分の死に意味を持たせよう」という臭いがプンプンしてくるからだ。”

 過去に、バイクの事故で生死の境をさまようほどの大怪我をした著者。そんな経験から、自分の命は「もらったもの」だという意識が強いという。死を目の前に控えて、バタバタしたくないという思いがあるのだ。

■死刑廃止論を支持する理由

 世の一般的な死刑廃止論者たちは、「死刑は非人道的」「死よりも、生きて償いを」と意見を述べるが、著者が死刑に反対するのはそういった理由からではないそうだ。

「生きること」と「死ぬこと」はいつも対の関係であり、一生懸命生きようとすればするほど「死」は重みを増していくと著者は考える。だから、懸命に生きようとしない人間にとっては「死」はさほど重要なことではなく、どんどん軽いものになってしまうのではととらえる。

 したがって、命の重みがわからないような罪を犯した人間にとって「極刑」は、周囲の人間が期待するような意味をなさないというのだ。

“このところの凶悪事件は、「死刑になっても構わないから社会に報復してやりたい、メチャメチャにしてやりたい」というヤツの犯行が目立つ。(中略)本人が「早く死刑にしろ」なんていってやがったのに、望み通りすぐ死刑にしてやったのは大きな間違いだったと思う。”

「赤信号 みんなで渡れば怖くない」をはじめ、これまで痛烈なブラックユーモアで一世を風靡してきた著者は、今もまだその地位に甘んじることなく進化を続けている。誰にも真似できないその唯一無二の視点で、これからも世の中の常識を斬り続けて欲しい。

文=銀璃子