「性的魅力=美」の方程式は動物にヒントが? セックスアピールの源をたどってみると…

スポーツ・科学

2019/8/27

『動物たちのセックスアピール 性的魅力の進化論』(マイケル・J・ライアン:著、東郷えりか:訳/河出書房新社)

「魅力的な人」とはどんな人だろう。見た目が整っていること、美しさ、話し方、声、香り…細かい点では人それぞれだろうが、「誰にでも好まれる普遍的な基準」というものは存在するのかもしれない。そしてそれはときに、「性的魅力」として異性を刺激し、引き寄せる。それは人だけでなく、動物の場合も同様に。

『動物たちのセックスアピール 性的魅力の進化論』(マイケル・J・ライアン:著、東郷えりか:訳/河出書房新社)の著者は、テキサス大学オースティン校の教授を務める科学者。彼は中央アメリカに生息する一見地味なカエルを40年にわたり研究してきた、“その世界”においては知る人ぞ知る存在だ。

■性的魅力(セックスアピール)=「美しい」?

 本書の原題は「A Taste for the Beautiful – The Evolution of Attraction(美しいものへの好み – 魅力の進化)」であり、「魅力的なもの」を「美」と定義づけて説を展開する。人間にとっての容姿、スタイルなどにあたる「美」は、虫や動物たちにとっては、体の大きさ、鳴き声の良さ、体から発する性的な匂いや味、そして踊りなども含まれる。

 本書は全部で8つの章に分かれているが、そのそれぞれにおいて著者は、人における事例をあげて、そこに専門的な分析や著者自身の研究説明を用いて解説を加える。たとえば、それは、現実離れしたスタイルを持つバービー人形の美についてであったり、フェティシズムについての考察だったり、映画のワンシーンであったりする。

 たとえば「好き」と「欲しい」という感情の脳における働きの違いについては、メグ・ライアンとビリー・クリスタルが主演した有名な映画のワンシーンがとりあげられている。

“映画『恋人たちの予感』では、ライアンの演じる役柄がニューヨーク市の有名なカッツ・デリカテッセンで食事をしながらオーガズムに達したふりをする。彼女の見せかけの絶頂が終わると、近くにいた女性がライアンのオーガズムは彼女の皿にあった料理と関連すると思い込み、ウエイターにこう注文する。「あの方がたべていたものをいただくわ」。”

“具体的にはマウスが甘いご馳走をもらった際にどれだけ舌やヒゲを舐めたかを数えた。(中略)この研究はドーパミンが「好き」ではなく、むしろ「欲しい」という感情にかかわっていたことを示した。この違いはまた、薬物、セックス、ギャンブル、摂食など、あらゆる種類の依存症で広く知られたドーパミンの役割も説明する。”

 本書はただ性的だったり、扇情的な描写をあげるだけではなく、「美」という魅力についてさまざまな実験や観察の記録から分析する、科学的な研究に基づく文献だ。これらは、人である私たち、すなわち自分の中に無意識に存在する「好き」や「欲しい」を知る、大きなヒントになるに違いない。

文=銀璃子