恋した先輩は、異常なホラーマニアでした……。異色の恋愛×ホラーマンガ『片恋スクリーム』

マンガ

公開日:2019/9/1

『片恋スクリーム』(四位晴果/小学館)

 好きな人のためにどこまで自分をささげることができるか。誰でも好きな相手の趣味嗜好を理解しようと努力したり、無理やり受け入れようとしたりした経験はあるだろう。「恋は盲目」とはよく言ったものである。そして、そんないきすぎた恋心は、時に人をおかしくさせてしまう。

 このたび紹介するマンガ『片恋スクリーム』(四位晴果/小学館)は、かなり変わった嗜好を持つ男に惚れすぎてしまった女子高生を描いている。

 主人公の間野あかりは高校1年生、思春期真っ只中の少女だ。物語はそんな彼女が同じ高校の先輩である高枝裕二に一目惚れし、告白するシーンから始まる。

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 しかし高枝からの答えは「0点」と「がっかりだ」の言葉のみ。彼はあかりが下駄箱に入れた呼び出しの手紙に恐ろしさを感じたから来てみただけと告げる。

 フラれて落ち込むあかりに友人は、彼が“異常なまでのホラーマニア”であることと、超常現象を撮影するためには犠牲をいとわない人間であるという噂を話し、「フラれて正解だ」とフォローする。しかしあかりはそこに恋愛成就への活路を見いだしてしまうのだ。

「好きな人の好きなものを理解すること‼それが勝利への第一歩‼」

 これを機に彼女は、ホラーマンガや映画を見漁り、彼の異常なまでの趣味嗜好に近づこうと心霊スポットについていくなど、ベクトル違いの努力をしてしまう。もちろん友人の説得もどこ吹く風である。そして一度は「邪魔だ」とあかりに告げた高枝も、彼女のおびえる声や顔に霊が反応することに気づき、興味を持ち始める。

 1巻ではあかりと高枝がいくつもの心霊スポットを訪れ、霊と遭遇するエピソードが描かれている。しかし、あかりは高枝に利用されていることに気づかない。むしろ高枝が自分に恋愛対象として興味を持ってくれているのではないかとさえ思っている。そして高枝の気をより引くために自らを犠牲にすることすら厭わなくなる。

 もちろん、本作の各エピソードに出てくる幽霊はどれも気持ち悪く恐ろしい。ただそれと同じくらい、あかりの行動にも恐怖を感じてならない。好きな人に振り向いてもらいたいがために自らの体や命を犠牲にするなんて正気の沙汰ではないからだ。彼女がどんなことをしたのかは、ぜひ読んで知っていただきたい。

 巻末であかりは、高枝の異常なまでのホラーへの愛に気づくが、彼女はこのように告げる。

「高枝先輩。やっぱり私、貴方が大好きです」と。

 本作は、一見ホラー+恋愛に励む女子高生を描いているように思えるが、彼女の行動がおかしいと気づいた瞬間、幽霊を見たときとは違った恐怖が読者を襲う。幸せになりたいのであれば決して真似はしないように……。

文=トヤカン