職場の仲間に恵まれていないと感じたら――『宇宙兄弟』からヒントを得るうまくいくチームの話

ビジネス

2019/9/2

『宇宙兄弟 今いる仲間でうまくいく チームの話』(長尾彰/学研プラス)

 会社勤めだろうと、個人事業主(フリーランス)だろうと、経営者だろうと、ほとんどの人は「チームの一員」だ。その事業やプロジェクトを成功させるため、未来を見据えて継続させるため、「リーダー」を中心にみんなで連携して働く。けれども多くの人はこんなことを考えているのではないか?

「自分はチームや仲間に恵まれていない…」

 職場のギスギスや同じプロジェクトチーム内の不協和は、日本社会の働きづらさの一因だ。問題を解決するには、転職したりチームのメンバーを入れ替えたりする方法があるが、できれば誰だって「今いる仲間たち」とうまく働きたい。でもそれを実現するには、どうすればいいのか。

 もしそのように悩んでいるなら、『宇宙兄弟 今いる仲間でうまくいく チームの話』(長尾彰/学研プラス)に答えを求めてみてほしい。本書は「今いる仲間とうまくいく」ための心構えや方法を、マンガ『宇宙兄弟』に登場する魅力的なキャラクターを通じて解説している。

■正反対の2人がチームづくりの出発点

 本書は、『宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない。』の第2弾でもある。前書では宇宙兄弟のエピソードを織り交ぜながら、完璧を目指すのではなく愉快を目指す「愚者風リーダー」の大切さを指摘し、話題になった。そして今回は、六太のチーム「ジョーカーズ」のエピソードにフォーカスしながら、“仕事を通じて成長する”チームづくりを提案している。

>前作レビュー
部署にいるとなぜかうまくいく!『宇宙兄弟』南波六太のような「次世代リーダー像」とは?

 著者で組織ファシリテーターの長尾彰さんは、まず「チームづくりは、正反対の2人から始めよう」と読者にアドバイスを送る。アップルの創業者スティーブ・ジョブズとウォズニアックのように、宇宙兄弟の六太と日々人のように、得意と苦手を補い合える“完璧じゃない2人”で支え合うことが理想であり、チームづくりの出発点なのだ。そして、もし「今いる仲間」とうまく働きたいなら、タイプの違う仲間を1人見つけて、2人で一緒にチームをリードしていけばいいという。

 また、本書を読んで興味深いのが、「4つのスタイルのリーダーが、それぞれ状況に応じて自分の出番を意識しながらチームをけん引する」ことだ。この部分を読むと、誰もが抱きがちなリーダー像が大きく変わるだろう。

■誰もが当てはまる4つのスタイルのリーダー

 本書を読むと、どんな人にも強みと苦手が存在し、場面に応じてチームを引っ張るリーダー役になれると理解できる。たとえば支援と促進が得意な「ファシリテーター型」は、仕事の結果よりも目的やプロセスを大切にし、自分が先頭に立つことよりもメンバーをサポートする力に長けている。

 宇宙兄弟ならば、六太がそうだ。月面で「シャロン天文台」の建設を続ける場面で、フィリップ・ルイスに「自分のやっていることの“意味”を探す必要はない。やったことの結果が、誰かの“意味あること”になればいいんだ」と話したように、リーダーの風格はまったくないけど、彼がいるとなぜか物事がうまくいく。これがファシリテーター型リーダーだ。

 このほか職人肌で成果を出すのが得意な「マエストロ型」、教えて諭すのが得意な「ティーチャー型」、専門的な知識でけん引するのが得意な「コンサルタント型」があり、あわせて4つのスタイルを長尾さんが宇宙兄弟のエピソードを交えながら解説している。本書ではチェックシートが用意されていて、読者自身が4つのスタイルのリーダーのうちどのタイプなのか、大まかに当てはめることができる。

■状況に応じてメンバーがリーダーになってチームをけん引する

 大切なことは、「この4つのスタイルうちどれが優れている」とか「どれがもっともリーダー役に向いている」とかじゃない。自分のスタイルを理解し、状況に応じてメンバーが「自分の出番」でチームをけん引することだ。

 日々人にとって偉大な先輩宇宙飛行士だったブライアン・J。彼は、日々人がNASAの訓練で苦戦するたび、「大先輩ブライアン・Jがわざわざ来てやったぞ」とユーモアを放ちながら現れ、見事なアドバイスを送った。ブライアンはいつも遠くから日々人のことを見守っていて、「いよいよ自分の出番だ」と感じたときだけサポートしていたのだ。

 ブライアンのように自分の役割や「出番」を理解して行動できる人がいると、メンバーは安心して自分の強みを活かした働きができ、チームの成長につながる。長尾さんが4つのスタイルのリーダーを解説するのは、自分がどのスタイルか理解することで、直面する状況ごとに誰もがリーダーとしてチームをけん引して、今いる仲間たちとうまく働けるようになるため。得意と苦手を補い合える正反対の2人がチームづくりの出発点となるのも、こういった理由があるからだ。

 本書では、達成すべき目標の「緊急度」と「重要度」に応じて、4つのリーダーの出番を場合分けしている。たとえばファシリテーター型の六太は、急ぎじゃないけど、今からしっかりやっておきたい「緊急度は低いが、重要度が高い」仕事のときに活躍する。

 今いる仲間たちとうまく働けないのは、重大なミスの対処でコンサルタント型リーダーが活躍できなかったり、新人の指導を得意とするティーチャー型が自分の出番を逃していたり、メンバーの強みを活かせない状況が続いているからではないか。本書を読むと、職場の誰もがリーダーとして活躍すべきだと感じるし、それが自分自身だけじゃなくチームを素晴らしい方向へ導く方法だと痛感する。

■阿吽の呼吸で動く「無敵のチーム」へ導くカギ

 ここまで本書より、状況に応じて活躍するリーダーたちをご紹介してきた。長尾さんはこのほか、常に成果を生み出し続ける「無敵のチーム」にメンバーを導く方法を解説する。おそらく課長級や部長級の職に就く人は、喉から手が出るほど欲しいメソッドだろう。まず、チームの成長には4つの段階(ステージ)がある。

第1ステージ【形成期】フォーミング
第2ステージ【試行錯誤期】ストーミング
第3ステージ【規範期】ノーミング
第4ステージ【達成期】トランスフォーミング

 世の多くの組織が、相手のことも何をすればいいかも分からず、与えられた目標に向かって淡々と行動する「フォーミング」で停滞している。最終段階である、1つの生き物のように機能して目覚ましい成果を出す「トランスフォーミング」に成長するチームは、ほんの一握りだそうだ。

 長尾さんによると、チームの成長段階を「フォーミング」から「トランスフォーミング」に成長させるカギは、「心理的安全を生み出すこと」、そして「試行錯誤を生み出すこと」だそうだ。気になる読者は、阿吽の呼吸で動く「無敵のチーム」をつくヒントを、ぜひ本書から読み取ってほしい。

 どんな組織であってもチームであっても、ギスギスしない時期はない。仕事で誰かと誰かがもめるのはある種の必然のように感じる。そんなときこそ4つのリーダーの出番で、そのリーダー役はあなたかもしれないし、あなたの部下かもしれない。本書は仲間のギスギスに悩む状況から抜け出すヒントを与えるだけでなく、私たちが職場でリーダーとして活躍するきっかけにもなるはずだ。

文=いのうえゆきひろ