何故、人は神様という装置を生み出したのか

公開日:2012/5/12

人間的な、あまりに人間的な -まんがで読破-

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : イースト・プレス
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:ニーチェ企画・漫画 価格:400円

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「ニーチェ」ってよく耳にしますけど一体何を考えていた人なんでしょうね。そんなふとした好奇心がぼくに本書を手に取らせました。

ぼくは駆け出しのシナリオライターなので、これまで人間が培ってきた思想とか価値観などをより深く勉強したいなと思っていまして、本書もその流れから読んでしまいました。で、正直かなり感化されましたね(笑)。内容がそのタイトル「人間的な、あまりに人間的な」を本当に地でいくようなものになっているんです。宗教とか善悪とかを取っ払って、人間の本質を炙り出すような内容は現代にも通じるところが多々ありました。

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「ニーチェ」に関してはまったくの予備知識なしで挑んだ僕ですが、彼が言いたいことは物語を通してよく伝わってきたかと思います。主人公フリッツは以下の内容の板挟みによって苦しみます。「周囲は自分が神父になることを期待する」「しかし自身は音楽の道に喜びを見いだしている」「だがそちらにのめり込むと病気の母を看病している女性(フリッツに惚れている)の不満が増大していく→虐待介護」。主人公はちょっと根暗な感じですが、責任感があるために簡単に物事を投げ出せないでいます。フリッツは音楽に没頭したいために嘘に嘘を重ねて生活するようになるのですが、彼を縛り付ける何かはそれを良しとはしません。ドラマとしてもとっても人間的ですよね。

さてこの物語には実は結末が存在しません。何故なら途中からニーチェ本人による解説になってしまうからです(笑)。しかしこの解説が何とも目から鱗なんですね。ニーチェってこんな性格のおっさんだったのか、とややツッコミが入る狂気ぷりなのですが、そこは良しとしましょう。ですが彼が言っていることはあながち間違いではないなと思わせてくれます。結論から言えば正義とは「同情」である、なんてなかなか言えませんよね。良心の呵責とは、その同情に逆らうときに生まれるものだそうです。これが彼の言う「人間的」なんでしょうね。

「人間的な、あまりに人間的な」はニーチェのビギナーにもってこいの読みやすさです。うなずくこともあれば、そこは違うなんてツッコミを入れながら読んだりするとまた違った読書が味わえるかもしれませんね。ニーチェのキャラのぶっ飛びっぷりも見所です。


主人公は結構な根暗君です(笑)

何かと疑心暗鬼になってしまうんですね

主人公フリッツが唯一、人生を謳歌している瞬間

フリッツが選ぼうとした道によって、一人の女性を追い詰めていた…

ニーチェによる世界の再認識 (C)バラエティ・アートワークス/イースト・プレス