トラウマ必至のスプラッター描写! “人の顔”を持つ動物たちの残忍な復讐劇『ジンメン』

マンガ

公開日:2019/9/8

『ジンメン』(カトウタカヒロ/小学館)

 動物園の起源は江戸時代初期、美しい毛並みや羽を持つ鳥などの動物を公開し始めたことにある。以来、“人間を楽しませる場”として発展した動物園には世代を問わず多くの人々が訪れている。しかし、愛くるしい動物たちが反旗を翻して我々を襲い始めたら……? それでも人間たちは動物を“かわいい”と思えるだろうか。

『ジンメン』(カトウタカヒロ/小学館)の主人公・神宮マサトは、高校転入をきっかけとして7年振りに幼少期を過ごした町に戻ってきた。マサトには動物たちの心を開かせる不思議な力があり、どんな動物とも“言葉なき対話”ができる。そんな彼が幼馴染のヒトミとの再会の場に選んだのは、やはり動物園。子供の頃に何度となく通った「不二サファリパーク」だ。

 デート当日、開園前の動物園は思った以上にシーンとしていた。動物たちは檻の中にいるのだろうか? マサトたちが奇妙な様子を感じとった瞬間、突然これまで聞いたことのないような絶叫が響く。そして目にしたのは、動物に噛み殺されていく人間の姿だった。

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 親交のある飼育員・中田さんを探して園内を走るマサトたちは、動物たちの変化にすぐに気付いた。キリン、ゾウ、カモシカ……すべての動物たちの顔が“人面”になり、言葉を話しているのだ。その表情にはもとの愛くるしさは一切なく、本能の赴くままに人間を襲っていた。

 無事に中田さんと合流し、脱出したマサトたちは少しずつ情報を整理していく。新園長によって過度な“検査”が行われていたことや、異常行動が見られたのは決まって検査後の動物であったことから考察すると、動物園でなんらかの実験が行われているのは明白だった。そして、動物たちが復讐のために人間を襲っていることも。

 しかし、動物たちの目的はそれだけではなかったのだ。第1巻は、マサトたちを更なる恐怖に陥れる動物たちからの「表明」がなされるラストシーンで幕を閉じる。

“私たちは話しました、何故人間が怖いのか(中略)いろいろ考えた末、一つの結論に、至りました。ヒトがいなくなればいい”

“我々は…ジンメン。これより不二山一帯は日本国から独立し、「動物公国」を樹立するものとする”

 マサトたちは人類に反旗を翻した動物たちと、どのように対峙していくのだろうか。圧倒的なスケールで描かれる本作で、地獄と化したアニマル・パニック・ホラーの世界を味わってほしい。ただし、スプラッター作品が苦手な人、そして動物園に行く予定のある人はご注意を。

文=山本杏奈