コンパクトながら衝撃度絶大、無駄を削ぎ落としたSFパニックサスペンス

小説・エッセイ

2012/5/13

日曜日には鼠(ラット)を殺せ

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 祥伝社
ジャンル: 購入元:電子文庫パブリ
著者名:山田正紀 価格:367円

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国内SF作家の第一人者、山田正紀によるパニック系サスペンス。フレッド・ジンネマン監督、グレゴリー・ペック主演で1964年に発表された映画、「BEHOLD A PALE HORSE」の邦題が「日曜日には鼠を殺せ」。目次にわざわざ記述があることから予想するに、おそらくこのタイトルにインスパイアされて生み出された作品。

映画の方は1930年代に起こったスペイン内戦時代をモチーフに制作されたサスペンスだが、こちらの舞台は“近未来の(たぶん)日本”。設定ではどうやら「統首による恐怖政治に支配された国」ということになっていて、逆らった者は全て監獄行きに。しかし、統首の誕生日には数名に脱出のチャンスが与えられる。統首自らが考案した「恐怖城」の異名を取る人体実験施設から無事逃げ果せれば、特赦を得て自由の身となる、という状況。本作はここに放り込まれた元刑事・テロリスト・ニュースキャスターとそのアシスタント、主婦など多種多様な8名が、過酷な「生存ゲーム」を展開するSFパニックサスペンスである。

長編の体を為してこそいるものの、実際の文章量はかなり少なめ。状況や世界観の説明等を徹底して省き、限りなくリアルな「生存りゲーム」の顛末のみが臨場感たっぷりに描かれる。かといって手が抜かれているワケではなく、関知・追尾型のロボットやテレパシーなど、これぞSF! なアイデアも多々。このあたりのテクニックはやはり伊達ではない。

ストーリー展開はとてつもなくスピーディーで、無駄な描写が一切ない。であるがゆえに、場合によっては多少の食い足りなさ・物足りなさを感じてしまう人もいるかもしれない。確かに状況説明がもう少しだけ詳しければ、という気がしないでもないのだが、そうなった場合にこの異様なまでの緊張感が保てたかどうか…。

コンパクトながら、密度の高い快作。SFマニアで、さらにジェットコースター的な展開が大好きな人にオススメです。


導入部分からいきなり緊迫、あっという間に異様な世界に引き込まれる

状況説明は目次横の地図のみ、端には名作映画の邦題が象徴的に記述されている

パニック要素は前半から盛りだくさん、とにかく緊張感が途切れない

フォーマットはXMDF形式、9箇所まで入れられるしおり機能が便利

電車で立って読む場合は、iPad縦表示・文字大きめ、なぜかフォントをゴシックにすると感じが出る