あの衝撃シーンでアニメも話題沸騰! 恋愛と性欲の狭間で揺れ動く女子高生たちの群像劇『荒ぶる季節の乙女どもよ。』

マンガ

公開日:2019/9/13

『荒ぶる季節の乙女どもよ。』(絵本奈央:画、岡田麿里:原作/講談社)

「そう来たか……!」と思わず爆笑してしまったマンガ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』(絵本奈央:画、岡田麿里:原作/講談社)の最新7巻。さすが、岡田麿里さんである。読者の薄っぺらい予想なんて超えに超えて荒ぶる少女たちの、なんて痛々しく美しいことか。ひとしきり笑い、そしてなぜだか泣きそうになった。ああ、ここには私たちがいる。かつての、そして今なお昇華しきれない切実な欲望を抱えた、乙女たちが。

 少女としての自分はもうすぐ死んでしまうから、その前にセックスがしたいという美少女・菅原の発言をきっかけに、文学における性愛ではなく、現実のそれに向き合っていく文芸部の女子高生たち。イケメンに成長した幼なじみ・泉との関係にとまどう和紗。不純異性交遊なんて不潔だと頑なに拒絶する曾根崎部長。「おっさんの妄想かよ!」と編集者に笑われた悔しさをはねかえすため、ネットで出会った男と初体験を試みる小説家志望の本郷先輩。穏やかな女子同士の友情を何より大事にしている百々子。彼女たちを通じて描かれるのは、純真な恋と欲望にまみれたセックスの狭間で揺れ動く、むきだしの感情だ。

 本作を語るにあたって誰もが話題にあげるのは1巻、泉の自慰を和紗が目撃してしまうという衝撃シーンだが(7月5日に放送開始したアニメの1話でもしっかり描かれていたが、音声が入るとその“間”も含めてまた違った生々しさがあり、最高だった。泉はとにもかくにもかわいそうである)、2巻以降、泉をめぐる和紗と菅原の三角関係や、誰より真っ先に恋に落ちてイメチェンをはかる曾根崎部長の愛らしさも要注目。

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 愛されたい、誰かに認めてもらいたい欲求を、性的に受け入れてもらおうとすることで満たそうとする、愚かだけれどわかりみの強い暴走。恋と友情のどちらを選ぶか、ありがちだけど切実な究極の選択。大好きで傷つけたくなんてないのにうっすら仕掛けてしまう女同士のマウンティング。それをかわすための無邪気な笑顔。正論の通用しない、感情のるつぼがどろどろに、けれど純真な輝きをもって描かれていくのである。

 おそらく読めば過去の自分が掘り起こされて「わーっ!!!」と叫びたくなるはずだ。誰かひとりに強く共感するというよりも、全員が少しずつ、かつての自分や友達を髣髴とさせる要素をもっているから、彼女たちの荒ぶる暴走が、他人事とは思えない。とにかく心をエグってくるのに、読みつづけてしまうのは、岡田氏の絶妙な物語運びと、絵本奈央氏の繊細で美しいイラストがあってこそ。

 泉と和紗のキャットファイトを中心に、女同士の微妙な関係が加速して描かれると思いきや、まさかの学校側の「男女交際禁止宣言」によって、一時休戦、どころかタッグを組んで立ち上がった文芸部の乙女たち。セックスと言うこともできず「えすいばつ」と隠語をつくってまで生々しさから逃げていた彼女たちが、自分たちの「好き」を突き詰めた先に見つけるものとは。あれこれ予想するよりも、いちはやく続きが読みたい本作。アニメも抜群におもしろいので、あわせて要チェックである。

文=立花もも