人間と妖怪、醜いのはどちらなのか――

マンガ・アニメ

2019/9/15

『BEM(1)』(野原もさえ:漫画、ADKエモーションズ:原作、村田蓮爾:キャラクター原案/白泉社)

 今年2019年7月より夏アニメとして放送されている『BEM』。あの有名な『妖怪人間ベム』を大幅にリメイクして作られた作品で、先日コミカライズ版『BEM(1)』(野原もさえ:漫画、ADKエモーションズ:原作、村田蓮爾:キャラクター原案/白泉社)も発売された。

 本作品の舞台となるのは、架空の街「リブラシティ」。政治、経済、文化の中心で高層ビルが建ち並ぶ洗練された街「アッパーサイド」と、そこから橋を渡った先にある汚職や犯罪にまみれ荒廃した街「アウトサイド」の2つの地域で構成されている。

 そんなリブラシティの正義感に溢れる若き女性捜査官ソニア・サマーズは、以前はアッパーサイドに勤務していたが、頑なに正義を貫く姿勢と性格が仇となり、アウトサイドへ左遷されてしまう。そして彼女は、アウトサイドの現実を知ることとなる。

 警察が「舵取屋」と呼ばれている裏組織と持ちつ持たれつの関係を築き、刑事も“目こぼし料”をもらって見て見ぬふりをする世界。街では犯罪が日常化し、中には人間を捨てて超常的な力を使い犯罪に手を染める者もいる――。

 しかしその中で密かに己の正義を貫き、とある目的のために人間たちを陰で助け続けている者がいた。それが“妖怪人間”と呼ばれている、人間になれなかった謎の生物ベム、ベラ、ベロの3人だ。彼らは普段は正体を隠し、ベムは成人男性、ベラは女の子、ベロは少年として人間の中に溶け込んで生活している。しかし人間に危機が迫ると、本来の妖怪の姿へ戻り、驚異的な身体能力で敵から市民を助けてくれるのだ。

 しかし、その醜い妖怪の姿を見た人間は、皆彼らを恐れ、疑い、敵だと判断してしまう。そういった辛い目に遭い続けてきた結果、ベロは人間に対して強い不信感を抱いている。そしてベム、ベラもまた、様々な思いを抱えている。

 本作品では、アウトサイドでの単純な犯罪以外にも、地位を持つ人間が自分以下の人間を見下し虐げる様子、人を騙し欺く様子、見掛けで人を判断し攻撃する様子など、人間が持つ醜さが多く描かれる。悪を憎む姿勢を崩さなかったソニアでさえも、ベムの妖怪の姿を見た時には自身を助けてくれたにもかかわらず、怯え、発砲している。

 これを客観的に見ていると「せっかく助けてくれたのにひどい…」と思ってしまうが、もしも自分がソニアの立場だったら、自分ならベムを受け入れただろうか? と考えると、正直自信がない。恐らく、ソニアと同じような行動をとっていただろう。2話以降のベラやベロが人を助けたシーンだってそうだ。視覚的、表面的なものだけ見て判断する人間は、物事の本質が見抜けず時に取り返しのつかない過ちを犯すのだと改めて考えた。

 見た目は普通だが心が醜い人間と、見た目は醜いが正義のもとに生きている妖怪人間たち。彼らの、彼女らの戦いは、これからも続いていく。

文=きこなび(月乃雫)