全ての働く人たちへの“労働賛歌(ラヴソング)”! ネクストブレイク必至、女傑・野獣たちが蠢く出版業界を漫画で描く

マンガ

公開日:2019/9/14

『ようこそ! アマゾネス☆ポケット編集部へ』(ジェントルメン中村/講談社)

「本が大好き!」な読者のみなさん、ごきげんよう。突然ですが、あなたの大好きな本がどうやって作られているか、気になったことはありませんか?

 恥ずかしながら筆者である私は、この業界に入るまで本がどんなふうに作られているのか、考えてみたこともありませんでした。出版社の中で働いてる作家さんが、書いた小説をコピー機みたいなやつで印刷して、それを本屋さんに直接運び込んで並べてる…わけないよね~!

 ――というわけで、本を愛する人、「そういえば本ってどうやって作ってんの?」と気になりはじめてしまった人に、「How to make “傑作(ベストセラー)”」。そこで『ようこそ! アマゾネス☆ポケット編集部へ』(ジェントルメン中村/講談社)をすすめたい。ページを開いた冒頭から濃さ全開で文芸編集(ギョーカイ)の真実(リアル)が繰り広げられる本作、覚悟してその扉を叩いてほしい!

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 新人編集者の白柳紀乃子は、“女傑(アマゾネス)”才堂厚子編集長とともに、とある文学賞の授賞パーティーに出席していた。会場には豪華なごちそうが並んでいるが、食事に気を取られている暇はない。文学賞のパーティーに出席する“編集者(ハンター)”の目的は、ただひとつ──受賞者である“小説家(エモノ)”に、自分の雑誌で書いてもらう約束を取りつけることだ。

 人気のある作家には、編集者たちが殺到する。デビュー作からすべて読んでいるという編集者、同人誌時代の作品まで読んでいるという編集者…だが、それくらいは、作家に惚れ込んでいる編集者なら当たり前のこと。紀乃子たちのライバル誌の編集長は、周囲の編集者より深い書き手への愛を示すため、ある“秘密兵器”を入手していた…!

 しかし、才堂厚子は動じない。彼女は、ライバル誌以上の“秘密兵器”を隠し持っていたからだ!!

 真の編集者は、人生におけるすべての局面で、“良い文章(エモノ)”への“網(アンテナ)”を張っている──才堂厚子の背中から、編集者としての極意を読み取る紀乃子。

 彼女は、原稿の誤字脱字チェックや事実確認を行う校閲者、手書き原稿を活字にする印刷会社のDTPオペレーター、本の外装をデザインする装丁家など、非常に個性的な“職人(プロ)”たちと出会いながら、編集者として成長していく。

 新人の紀乃子だから、本作りを進める上では、焦り、うろたえる場面もある。けれど、編集長の才堂厚子は、「案ずるな」と紀乃子の肩を頼もしく叩く。作家、装丁家、編集者…1冊の本が読者のもとに届くまでには、さまざまな人間の手が必要だ。だが、本作りに関わる者は、立場こそ違えど目的は一緒。ただ良い本を作るために、まっすぐ前を見ていればいい。良書誕生のピンチを救うのは、いつだって才堂の誠実な仕事ぶりだ。

 出版業界に興味があるという人はもちろん、すでに業界にいる人もリアルすぎるお仕事モノとして楽しめる本作。紹介ツイートは累計RT10000超、ネクストブレイク必至の著者が、世の中で働くすべての人に捧ぐ“労働賛歌(ラヴソング)”──情熱ほとばしる「ルビ芸」と画面からあふれ出る「圧」も、存分に体感してほしい。

文=三田ゆき