土曜日の午後、うっかり手を出したタピオカミルクティーで死にかけ…。笑いと共感がジワジワくる辛酸なめ子ワールド!

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公開日:2019/9/21

『タピオカミルクティーで死にかけた土曜日の午後』(辛酸なめ子/PHP研究所)

 自称「叫び下手」だという大人女子が、心の中で思わず絶叫してしまった瞬間の21景を、イラスト️×エッセイで紹介する『タピオカミルクティーで死にかけた土曜日の午後』(辛酸なめ子/PHP研究所)。著者の辛酸なめ子さんは漫画家であり人気コラムニスト。人間関係やスピリチュアルネタから海外セレブまでと幅広い興味の世界を、独自の視点で切り取ることで知られています。

 さて、あなたは咄嗟のときに叫べる人ですか? それとも叫べない人ですか? 「その分岐点は結構早い段階にあるような気がする」と語るなめ子さん。自身は「叫べないまま大人になった」というなめ子さんは、心の中に積年の叫びや思いを蓄積させてきたそうです。本書に収録されているのはさまざまなシチュエーションでの、なめ子さんの音のない叫び。40代半ばという大人だからこその心の叫びは、いったい何を訴えかけるのでしょうか?

■「理由があったら教えてください!」(タピオカミルクティー)

 ブームに踊らされてタピオカミルクティーを飲んでいたら吸い込んだタピオカが気管に詰まりかけた、というなめ子さん。

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 タピオカは年齢的に上限があるのでしょうか? それとも意識しないうちに飲み込む力が弱ってきたせい? 「でも最後の一粒まで吸引すると肺活量が鍛えられる気がします」とはなめ子さんの弁。捻り出したタピオカの“リハビリ利用”に笑いをこらえます…。

■「遺伝子くださーい!クローン作りたい!」(少年合唱団)

 年に一度は「少年合唱団の天使の波動」を受けたいというなめ子さん。いわく、「天使の声️×金髪」のもつ破壊力に慰撫されて、テロメア(染色体の先端のキャップ、若さに関係するといわれる)が伸びる気がするそう。「ウィーン少年合唱団」「パリの木の十字架少年合唱団」の聖歌を聴いて昇天しそうになり、「日本で一番のパワースポットはここかも」と満喫するなめ子さんです。

■「もらえるものはもらわないと」(ファッションイベント)

 なめ子さんが心の中で「嬉しい悲鳴」を上げるのは、無料サービスに遭遇したとき。毎年9月に開催されている「ヴォーグ・ファッションズ・ナイト・アウト」は、青山・原宿で夜遅くまでショッピングが楽しめる人気のファッションイベント。我こそはというお洒落さんたちがノベルティーやドリンクサービスなど、「タダ」をゲットしながら街をねり歩くキラキラしたお祭りです。

 なめ子さんはこのイベントに毎年行っているそうですが、タダでもらってばかりではなんだか悪いので、業界活性化のために少しでも還元しようと、もらった以上の買い物をしてしまうそう。40代女子、社会性のある大人の行動はさすがです。ちなみに「無料でものがもらえる運」は、無償奉仕や寄付をすると高まる“気”がする、とスピリチュアルに詳しいなめ子さんは述べています。

 心の中で思わず叫び声を上げてしまったエピソードには、なめ子さんならではの、ちょっと自虐的な笑いがたっぷり! 「今叫びたい!」という出来事は、平凡な日常に味付けを加えるスパイスのような役割であることを、なめ子さんは教えてくれます。40代女子の心の内を覗き見するつもりでも楽しめる1冊です。

文=泉ゆりこ