栄養不足を解消して、いつまでも元気に過ごしたいシニア世代のための簡単&おいしいレシピ

食・料理

公開日:2019/9/28

『手順3つで、しっかりおいしい 毎日のシニアごはん』(横山タカ子:料理、髙田和子:監修/主婦の友社)

 日本では高齢化が加速し、平均寿命は年々延びている。しかし、平均寿命と自立して生活できる健康寿命には大きな開きがあるとされ、介護の必要のある高齢者が増えているのも事実だ。年齢とともに筋肉量や体力が減少するため、シニアは特に日頃の食事を見直す必要があるだろう。『手順3つで、しっかりおいしい 毎日のシニアごはん』(横山タカ子:料理、髙田和子:監修/主婦の友社)では、シニア向けの栄養バランスの良い料理が多く紹介されている。

 シニア世代の食事で気をつけたいのが栄養不足だ。自分では今までと同じように食べているつもりでも、運動量の低下や食欲の減退によって食事量が全体的に減る傾向にある。毎日3度の食事を摂っていても、1回の食事量が少なければ栄養が足りていない可能性も大いにあるのだ。本書では特に、シニア世代に不足しがちなタンパク質やカルシウム、ビタミンなどを効率的に摂取できるレシピが多く掲載されているので、ぜひ作ってみてもらいたい。

 1日に必要な量のタンパク質を摂取するためには主菜の役割が大きい。卵や肉類などにはタンパク質が豊富に含まれているので、毎日意識して食べたいものだ。「鶏肉とゆで卵の煮物」は、タンパク質をしっかりと摂れる理想のメニューだろう。作り方は簡単で、鍋に一口大に切った鶏肉と2センチ角に切った玉ねぎを入れて、酒、砂糖、醤油、水を加えて煮るだけ。最後にゆで卵を加え入れて弱火で煮含めるというもの。鶏肉のうまみが加わるためだしも必要なく、作り置きができるので多めに作っておくのもおすすめだ。また、多めにゆで卵を作って調味料に漬けておくだけの「しょうゆづけゆで卵」も手軽にできる。

advertisement

 本書では、調理の秘訣として以下の3点が紹介してある。

・旬のものを組み合わせて食卓へ
・調味料はいいものをそろえておこう
・煮る、蒸す、焼く、調理はできるだけシンプルに

 旬の食材やいい調味料が揃えば、料理はシンプルが一番おいしいという。素材の持ち味を損なわないように、あまり手を加えないことがポイントとなる。煮るだけ、蒸すだけ、焼くだけと手間がかからない料理であれば毎日続けることも苦にならないだろう。特に、蒸し料理は油を使わないので体に負担がかからず、食材のうまみも逃さないのでおすすめの調理法だ。

 また、和え物や酢の物、サラダなどの副菜は、野菜だけになることでタンパク質が不足しがちになるという。タンパク質を「ちょい足し」することで、全体的にバランスの良い食事になるのだ。たとえば、「じゃことキャベツの酢の物」や「油揚げと切り干し大根の煮物」などは、じゃこや油揚げといったタンパク質を含む食材を足すことで栄養価がアップする。ちょっと目先が変わったレシピとしては、「チーズとトマトの蒸し物」。材料をせいろに入れて蒸すだけなので、とても手軽なのがうれしい。本書では他にも、簡単なご飯物や汁物、漬物レシピなども多数紹介してある。各レシピには1人分のエネルギー量とタンパク質量も記載されているので、必要な栄養素が摂れているかどうかが判断しやすいだろう。

 食事から必要な栄養を摂ることも大切だが、さらに自分で作ることで身体機能の低下を予防する効果も期待できるだろう。献立を決めて買い物に行く、料理の段取りを考える、味見をするという工程すべてが脳のトレーニングになるのだ。考えること、体を動かすことができる料理を、ぜひシニアの方々に実践してもらいたい。自分で料理ができない場合でも、一緒に暮らす家族が本書を参考にして栄養たっぷりの食事を作ってあげれば、いつまでも元気に過ごすことができるのではないだろうか。食べることはただ栄養補給をするだけでなく、精神的にも満足をもたらしてくれる。

文=トキタリコ