ポイ捨てを減らす目からウロコのしかけとは…? 親子で読みたい「世界をよくするユニークなしかけ」

暮らし

公開日:2019/9/26

『毎日がたのしくなる! まほうのしかけ しかけは世界を変える!!』(松村真宏/徳間書店)

 電車を降りるとエスカレーターの前に列ができている。急ぐなら階段を使えばいい。健康にもよさそうだ。視野を広げると、混雑解消にも貢献できる。しかし、実際は階段の利用率は高くない。

 省エネ目的で、世界的にデパートや駅の階段の利用率を高めようとする動きが高まっている。小学生向けに世界中のユニークな“しかけ”をまとめた『毎日がたのしくなる! まほうのしかけ しかけは世界を変える!!』(松村真宏/徳間書店)を見ると、「なるほど、これなら自分も階段を使ってみたくなる」と思える楽しいしかけに心が躍る。

 例えば、階段にセンサーとスピーカーが内蔵されており、上がり下りをすると階段がすてきな音を奏でる「ピアノ階段」は中国、韓国、アメリカほか世界の至る所にある。スウェーデンの首都ストックホルムのウーデンプラン駅でこれを実装したところ、階段の利用率は66パーセント増となった。日本では岐阜県の商業施設ほかで人々を楽しませている。

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 階段利用を促すしかけは、他にもある。日本では神奈川の京浜急行横浜駅と上大岡駅にある「健康階段」は、1段上がるごとに消費するカロリーが段差部分に明記されている。京都市下京区の区役所では、段差部分に「腕を振ってしっかり上がろう」などの人を励ますメッセージも併記されている。

 こういった階段の発想を、家庭でも取り入れることができそうだ。

 本書が勧めているのが、家事のカロリー消費を表にして、壁に貼るなどして家族で共有すること。例えば、30分間掃除機をかけると86キロカロリーの消費となる。部屋のかたづけでは91キロカロリー、食器洗いは47キロカロリー、そして洗濯(干す、取りこむ、たたむ)では105キロカロリーの消費となり、意外といい運動になることがわかる。カロリー消費の目的でジョギングの代わりに家事の一部をすると、自分がハッピーになるだけでなく、家族からも喜ばれる。誰も損をしないしかけは、実は発想次第で簡単に整えられる。

 本書の著者は、自ら「仕掛学(しかけがく)」という新しい学問分野を考案し、提唱している。しかけの定義は「公平性」「誘引性」「目的の二重性」の3要素を兼ね備えていること。言い換えると、誰も損をせず、自然としたくなり、異なる目的が同居していること。

 ゴミのポイ捨ても、しかけによって解消される例がある。例えば、ゴミ箱の上にバスケットゴールを設置すれば、ゴールがないゴミ箱に比べポイ捨てが減る。ゴミを思わずシュートしてゴミ箱に入れたくなるだけでなく、外したらゴミを拾いに行って再びシュートする姿が多く見られたという。

 夏祭りでは、串に刺して売ったキュウリ漬の串をポイ捨てされないように、段ボール箱をベースにして板で区切り、マスをたくさん作ったゴミ箱が活躍した。それらのマスは、横軸は「10才以下」「10代」「20代」といった年代で区切られ、縦軸は「有名になりたい」「幸せになりたい」などといった希望で区切られている。つまり、串1つで1票、アンケートに答えられるというわけだ。客はアンケートに答えられ、店は客の年代などがわかる。世界を見ると、スウェーデンの公園では、ゴミを入れると「ヒュ〜ッ」という落下音が約8秒鳴り、「ガシャーン!」と底に衝突する音が響くゴミ箱が人々に愛されている。

 本書を子どもと一緒にめくれば、しかけの楽しさを知り、社会の課題発見能力を養うだけでなく、家庭で取り入れられるアイデアもひらめくかもしれない。

文=ルートつつみ