他人には振り回されない! 自分を貫いて生きるブラック・ジャックの仕事術

ビジネス

公開日:2019/10/1

『まんが『ブラック・ジャック』に学ぶ自分を貫く働き方』(手塚治虫/プレジデント社)

 漫画界の巨匠・手塚治虫氏。『鉄腕アトム』や『ジャングル大帝』など、手塚氏が生み出した数々の名作は、彼が亡くなって30年以上経った今でも世界中の人から愛されている。そんな数ある名作の中、この記事で取り上げるのは「ブラック・ジャック」。医師免許を持たない天才外科医・ブラック・ジャックの姿を描いた医療漫画だ。医者は病院に勤務するのが当たり前とされる中で、組織に属すことなく自身の腕を武器に1人で医療活動を続け、多くの重症患者を救うブラック・ジャックの姿に憧れた人もいるだろう。

『まんが『ブラック・ジャック』に学ぶ自分を貫く働き方』(手塚治虫/プレジデント社)は、そんなブラック・ジャックの働き方に焦点を当てたビジネス本だ。「振り回されない」「常識に縛られない」「妥協しない」「言葉で損をしない」の4つの章に分かれており、彼の仕事への姿勢から自分を貫く方法を学ぶことができる。解説だけでなく実際の漫画のコマも載っているので、読みやすく、漫画を読んだことがない人でもブラック・ジャックの働き方がよくわかるのが魅力だ。さらに、解説ページでは作者である手塚氏の名言も紹介されており、手塚氏自身の仕事にまつわる考え方も知ることができる。

 では、ブラック・ジャックはどのような信念を持って働いているのだろう。本書で紹介されている自分を貫く働き方に、「『つながり』は割と『しがらみ』」という考え方がある。一般的に、仕事ではコネクションが大切だと言われている。しかし、たくさんの人とつながることを意識しすぎると、それが徐々にしがらみとなって自分を縛りつけることになりかねない。周囲に振り回されないためには、つながらないことも必要だといえる。

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 また、仕事をしていると馬が合わない人にも出会うもの。それはブラック・ジャックも同じだ。相手から不当に訴えられたり、暴行されたりと、嫌な思いをたくさん経験している。しかし、彼はそんな相手に仕返しせず、さっさと関係を切ってしまう。相手への仕返しを考えるのは時間の無駄。面倒な人のことを考えるくらいなら、自分がやりたいことに集中したほうが良い。「『許さない』より『関わらない』」ことが大切なのだ。

 さらに、たくさんの人がいる中で自分を貫いて働くためには、それに見合うだけの仕事の質が求められるだろう。本書では、結果を出すコツについて、「『量より質』はたいてい嘘」と紹介している。ブラック・ジャックは天才外科医として有名だが、最初からどんな手術でもできたわけではない。自分自身を手術したり、専門外である動物の手術に臨んだりと、圧倒的な経験量が彼の手術の腕を鍛えているのだ。量をこなさなければ仕事の質を高めることはできない。まずはさまざまな経験を積むべきだろう。

 そして、本書の中で個人的になるほどと思ったのが、「揉めるなら最初に揉めろ」という一文だ。ブラック・ジャックは手術前に必ず条件を提示し、相手がそれを飲まない場合は手術を行わなかった。仕事を始める前、条件をつけることにためらいを覚える人は多いのではないだろうか。しかし、条件をつけなかったことであとから相手と揉めてしまっては、お互いの関係が悪くなるばかりだ。揉めなくても、あのとき条件をつければ良かったと不満を持ち続けるかもしれない。周囲に振り回されないためには、事前に話し合ってお互いに納得のいく条件を決めておくことが重要なのだ。

 自分なりの信念を持って働くブラック・ジャックの仕事術がまとめられた本書。周囲の人に振り回されたくない、言いたいことを言えないなどの悩みを抱えた人におすすめだ。他人に合わせて働くことに不満を持っているなら、彼のように覚悟を持って自分らしく働けるよう、努力してみてはいかがだろうか。

文=かなづち