メートルは何を基準に決められたの? この世界の単位の秘密と不思議

スポーツ・科学

2019/9/30

『世界でいちばん素敵な単位の教室』(丸山一彦:監修/三才ブックス)

 メディアで広さや大きさの比較として「東京ドーム○個分」と表現されても、行ったことがなく子供の頃からピンとこなかった。大人になり、東京ドームで開催された骨董市で足を運んださいに場内を行き来するのに苦労して、ようやく感覚がつかめた。この東京ドームという単位、その前には霞が関ビルディングが使われることが多く、調べてみたら東京ドームは容積で考えると2.48霞が関ビル単位となるそうだ。さらに戦前には、旧丸ノ内ビルヂングが丸ビル単位として使われていたようだが、残念ながら東京ドーム単位や霞が関ビル単位との比較は分からなかった。さて、せっかくなのでもう少し真面目に単位のことを調べてみようと、『世界でいちばん素敵な単位の教室』(丸山一彦:監修/三才ブックス)を開いてみた。

 本書は表紙がやけに色鮮やかなのをどうしてなのかと思ったら、単位に関連する景観や物体の写真集のような趣向が凝らされていた。物事を覚えるのには、視覚的なイメージなどとリンクさせるのが良いという話があるから、目でも愉しめる本書は理に適っている。

 まず身近な「メートル」は、「地球の北極から赤道までの子午線の長さの1000万分の1を1メートル(m)と定めた」そうで、1790年に生まれた単位だ。ただし、当時の基準とされた「メートル原器」は白金90%、イリジウム10%の合金製で、時間とともに変化することが分かったため、1960年代に「クリプトン86」という原子が出す波長を基準にすると改められ、1980年代から現在においては「光の速度」が基準となっている。

 その光の速度で見聞きする機会が多い単位の「光年」は、光が1年間に進む距離のことで1光年は約9兆4600億km。これだけだとイメージしにくいが、新幹線の速度を時速300kmとすると、約360万年かかるというから気が遠くなる距離に1年で到達する速さというのは分かる。光と関連する単位には、意外にも放射線の強さを表す「ベクレル」がある。気をつけなければならないのは混同されがちな放射能と放射線の違いで、放射能は放射線を出す能力のことを指し、放射線というのは目に見えない光や粒子の仲間であるため、太陽からはもちろん宇宙からも降り注いでおり、それどころか動植物など、身の回りの物も発している。そして、ベクレルとともに提示されることのある「シーベルト」は、人体がどれくらい放射線を受けたかを表す単位で、放射線の危険性を論じるにはこちらが重要。しかも、先にも書いたように放射線をゼロにするというのは、そもそも無理な話だから本書でも、「必要以上に怖がる必要はありません」と述べている。

 本書で特に面白いと思ったのは、海外と日本での単位の事情が異なること。日本では飲食店のメニューや飲食物に当たり前のように表記されている熱量を示す「カロリー」は、実は海外と比較すると少数派で、多くの国は「ジュール」を用いているという。カロリーが熱量だけを表しているのに対して、ジュールは物体に加わる力と動いた距離をかけた「仕事」のことで、学校で「仕事=力×距離」の式を見た記憶のある人もいるのではなかろうか。私は本書を読むまで、すっかり忘れていた。

 同じことを表しているはずなのに単位が変わったものとして、気圧を示す「ヘクトパスカル」にも触れておこう。単位が変わっても数値は同じなので、移行時にあまり意識した記憶が無いが、昔の台風のニュースでは「ミリバール」という気圧の単位を使っていた。「バール」が圧力の単位で、その1000分の1を表すのがミリバールであり、あるいは平方メートルに約100グラムの重さの物が垂直に乗ったときにかかる力「パスカル」に100倍を意味する「ヘクト」を合わせたのがヘクトパスカルだという。ヘクトパスカルを用いるようになったのは、国際的に使われている単位に合わせたからだそうだが、単位によって海外に合わせたり合わせなかったりしていて、基準なるものは案外と曖昧なようで。

文=清水銀嶺