【本人コメント】加藤ミリヤ初のエッセイ『あらゆる小さな運命のこと』――恋について、仕事について、素直に綴ったその内容とは

エンタメ

2019/10/5

自分の人生を良くするのは自分しかいない。

巡ってくるチャンスを生かすも殺すも最後は自分なんだと思ったら、もう自分に甘さを許してはいられない。

『あらゆる小さな運命のこと』(加藤ミリヤ/河出書房新社)

 そんな、凛とした言葉が並ぶ『あらゆる小さな運命のこと』(河出書房新社)は、今年でデビュー15周年を迎える加藤ミリヤさんが「私生活でも結婚や出産など変化があったこともあり、アーティスト活動と個人としての人生を一緒に振り返ってみたいと思いました」と書き綴った初のエッセイだ。

 13歳でソニーミュージック・オーディションに合格し、「女子高生のカリスマ」とも呼ばれた彼女が、世の女性たちの心をさらってきたのは、単に恋の切なさを歌う歌詞が共感を呼んだからではない。さみしさや孤独に揺れ惑う弱さと同時に、それでも自分の足で立とう、立ちたいと願う自立した心を歌っていたからだ。彼女のもつ弱さと強さに対する強烈な共感と憧れ。その源泉が本作を読むとうかがいしれる。

 歌のイメージで“メンヘラ代表”“つらい恋ばかりしている二番手の女”と言われることが多く、それを“意図的に書いてきた結果だからある意味勲章かもしれないけど、嘘だらけのゴシップや実際の自分とのギャップに真剣に悩んでいたこともある”と語る「イメージと格闘し続ける人生」は、本書において等身大の彼女を赤裸々につづったエピソードだ。「赤裸々に語った、という感覚はないんです。苦しかったことや隠していたことを吐露したわけではなく、書きたいことを書きたいままに素直に書きました」と語る当人も、同章については「言いたいことは全部言った!」と気に入っているという。

 傷つき、迷い、それでも自分が自分であることを譲らず、闘い続けてきた加藤さんの生き様は美しい。そして葛藤を経て生まれたからこそ、紡がれる言葉も唯一無二の美しさを放つ。同章の締めくくりの文章には、読んでいてため息が漏れた。

他人によって傷ついた言葉も、思い出して腸が煮えくり返るような言葉も、泡のように消えていくよう。今、私の心はとても穏やかになっている。

 加藤さんは何があっても傷つかないわけではないし、傷つくのが怖くないわけでもない。ただ、傷を抱えて縮こまって、人生が台無しになっていくのを恐れている。傷を癒してくれるものは、自分の足で踏み出し続けた一歩の積み重ねの先にしかないのだと、知っているから。

「大人になるとディフェンシブになる一面もなくはないけれど、こわいという気持ち以上に“見てみたい”“やってみたい”が勝ってきた。そして、必ずまわりが“あなたならできる”と勇気づけてくれました。」

 けれど穏やかになったからといって、そして結婚して子供をもったからといって、加藤さんが“落ち着いた大人”になってしまったわけではない。

「30代に入ったからといって大きな変化はないけれど、まだこんなにメラメラしてるんだ! という驚きはありました。イケイケだった20代よりは、落ち着いたりするのかなと思っていた。でも次々にやりたいことが出てくるから、自分でも意外なほど燃えています(笑)」と語るとおり、加藤さんはいつだって「自分という存在を生きる」ことに一生懸命だ。

「女性も男性も、年齢も私より上でも下でも、どんな人が読んでくれてもとっても嬉しいです。特に、“自分はこういう人間なんだ。こう生きるべきなんだ”と自分を縛ってしまいがちな人に読んでもらいたいです。私にもそういうところがあって、自分なりの発見を書いたので、受け取ってもらえたら最高だな」

 自分が弱いと知っている人間は、強くなれる。不自由を知っているからこそ、自由を探しに飛びだしていける。歌を通じて、言葉を通じて、そのことを表現し続ける加藤さんの言葉は、私たちにとって希望となり勇気となる。

メール取材・文=立花もも