レンタル彼氏、性感マッサージ、ホスト…女性向け風俗で“ひと肌脱いで”サービスする男の魅力とは?

社会

公開日:2019/10/14

『男を買ってみた。〜癒やしのメソッド〜』(鈴木セイ子/駒草出版)

「レンタル彼氏」という言葉を初めて聞いたとき、女の子向けのゲームかなと思ったが、リアルに存在するものらしい。『男を買ってみた。〜癒やしのメソッド〜』(鈴木セイ子/駒草出版)は、普段は心理カウンセラーとして働く著者がおそるおそる、そして取材魂と興味全開にして突き進んだ“女性向け風俗”の体験記だ。

 レンタル彼氏、女性専用性感マッサージ、ホストクラブ、出張ホストと4つのサービスを利用し、それぞれの違いや具体的な利用方法が書かれている。本書のスタンスは、女性たちに風俗をすすめる姿勢は一切なく、また逆に、やめたほうがいいという説教もない、あるがままのノンフィクションだ。気になる内容について、「レンタル彼氏」の項から少し紹介してみよう。

■「レンタル彼氏」にお金を払って得られたものは――

「レンタル彼氏」とWeb検索すると、広告も含めて色々なサイトが出てくる。その基本的な共通点は、「性的サービスはなし、食事やショッピングなどのデートのみ」だ。料金は、1時間で2000円から1万円とサイトによって幅がある。また、「彼氏」の指名料と当日発生するデート費用(食事代や交通費など)はすべて利用者が支払うので、総額はなかなかよいお値段になる。

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 さて、どんな「彼氏」を選ぶかは、サイト上のプロフィール写真を見てお好み次第だが、利用者の書き込みもチェックすべし。礼儀正しかったなどの感想や、人気の「彼氏」もわかる。著者は、細マッチョな癒し系イケメンをチョイス。遊園地でのデートを想定して、2時間の予約をした。

 ちなみに、仮名で予約し、デート中にプロポーズをして欲しい(著者はすでに結婚されている)というお願い付きだ。予約完了後、なんと「彼氏」からメールが!

〈◯◯さん初めまして。〇〇と申します。◯月◯日にどこそこで待ち合わせと伺っています。よろしくお願いします〉

とまあ、予約確認のメールなのだが、この時点ですでに「彼氏」として接してくれるという心憎い演出だ。

 当日、待ち合わせ場所で出会い、料金を前払いで渡してから、いざ遊園地へ。簡単な会話をし、著者の方から敬語をやめることを提案。少しずつ緊張を解きつつお互いの仕事などについて話し始める。仕事というのは、「彼氏」以外の仕事という意味だ。というのも、「彼氏」は土日限定で、普段は会社勤めをしている人が多いという。著者の「彼氏」も普段は会社員。女性慣れしていない素人さがかいま見えたとしても、それがかえって誠実そうな好印象となったようだ。もちろん「彼氏」としての振る舞いに文句はなく、褒め言葉や甘い言葉もありで、気の利かせどころもバッチリ。リクエストにもちゃんと応えてもらい、著者は夢の2時間が過ごせて大満足との感想だ。

■風俗サービスに求められているのは精神的な癒し?

 これは私も体験してみたい! と勢いづくところだが、「ごっこ遊び」だとわかっていても本気になっちゃいそうな精神状態なら要注意。自分を癒し元気にさせるためのサービスにお金を支払ったのだという、冷静な“ビジネス脳”にさっと切り替えられる状態での利用をおすすめする。そうでないと、金銭と心、そして生活も破綻してしまいかねない。逆の見方をすれば、それだけ快い時間を提供されるのかもしれないが…。

 この「レンタル彼氏」に限らず、女性向けの風俗に携わる男性たちは、女性に優しく、とにかく尊重し大切にしてくれる。例えば、ドアを開けるときの仕草、飲み物のすすめ方や、歩くペース、言葉の選び方など、品位ある自然な気遣いだ。尊重され大切に扱われるのは、男女問わず気持ちが良いもの。ただ、女性の方が男性より、精神的な喜びを強く求めていることは確かなようで、性的なサービスを利用するのも、実は身体より心を満たしたいからだという話も聞く。

 著者は、こうした現場で働く男性たちへのインタビューも行っている。やはり、できる人は、相手に何をしてあげようか考えるより、「相手の気持ちを癒すこと」を主軸に置いているという。多少時間外営業でもメールで悩みを聞いてくれ、体調や女性の日常に寄り添い「大丈夫?」と心配をしてくれることに、最大の癒しを感じるという利用者も多いようだ。彼らのその心意気には頭が下がる。しかし、“癒しを求める心”が世にはこれだけたくさん彷徨っているということに、勝手な仲間意識と、そしてやるせない切なさを感じるのだ。

文=奥みんす