日本マクドナルド第一号店の意外な場所とは? エスビー、松下電器産業…日本を代表する創業者100人の言葉

ビジネス

公開日:2019/10/18

『あの社長のこの言葉』(市川覚峰/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 仕事や人生に行き詰まりを感じた時、私たちの救いとなるのは、先人の言葉だ。歴史に足跡を残してきた人々の言葉は悩める私たちの道しるべになる。企業家ミュージアム代表・市川覚峰氏の『あの社長のこの言葉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、激動の時代を駆け抜けた100名の経営者の言葉をまとめた一冊。創業者たちの言葉からは、彼らの生きざまや個性が垣間みえる。そして、その言葉に込められた思いを知れば知るほど、なんだか仕事へのやる気が増してくるのだ。

 本書に掲載された言葉をいくつか紹介するとしよう。

儲ける経営より「儲かる経営」リコー創業者・市村清

 市村は言う。「事業というものは世間の利益と一致したところに繁栄するものであって、“儲けてやろう”という気持ちでやる事業には自ら限界があるものだ。ところが、“世の中のためにやるのだ”という精神で道を即してやれば、“自然に儲かる”ものであって、その方がむしろ利益は無限である」。「利幅を1割5分に下げても3倍売れば、利益はその5割増しになるじゃないか。儲けるより儲かる商売をやるべきだと私は思う」。儲けばかりを追い求めていてはいけない。大切なのは、世の中に益するという精神なのだ。リコーや銀座の三愛をはじめ二百数十社の会社を創業した市村氏の経験からにじみ出てきた言葉といえるだろう。

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商いとはほかでもない、ねばりである。ねばりを忘れては儲けることなぞできないし、商いそのものが成り立たない。エスビー食品 創業者 山崎峯次郎

 山崎は、当時高級料理だった「カレーライス」の大衆化を目指して、苦心を重ねた。カレーの絶妙な美味しさはどこにあるのか、原料は何なのか全く検討もつかない状態だったが、努力を重ね、見事にカレー粉の調合に成功したのだ。創業以来、山崎は「美味求真」を口癖にし、本物を作って人々に提供するためにはいかなる妥協も許さなかった。ねばり強く、美味しさを追い求めるその精神は今もエスビー食品に息づいているという。

みんながだめだと言うから、成功する。みんなが、いいとか、やりなさいと言ったら成功はおぼつかない。それだけ競争が多いからだ。日本マクドナルド創業社 藤田田

 日本マクドナルドの第一号店は、三越銀座店でオープンした。ハンバーガーという新しくて安価なものを、高級イメージの老舗で売るという戦略に当時は多くの者が驚かされたのだ。反対されたからといってそこでめげていては何事も成功しない。多くの人の反対を押し切りながらも、日本マクドナルドを大きくしてきた藤田だからこその言葉といえるだろう。

素直な心になりましょう。素直な心はあなたを強く聡明にいたします。松下幸之助 松下電器産業(現パナソニック)創業者

 松下の商売の原点は「どうしたら儲かるか」ではなく「いかに客に喜んでもらうか」にあったという。大勢の客の立場になりきって仕事をするために大切なのが、「素直な心」。利害や感情、知識や先入観などにとらわれず、物事をありのままに捉えること。すると、なすべきこと、なさざるべきことがわかってくるのだ。

 経営者の言葉に触れていると、なんだか背筋が伸びる心持ちがする。彼らは仕事に哲学をもって取り組んでいたのだ。この本には、仕事への姿勢から人間関係まで、全てのビジネスパーソンに役立つメッセージが満載。あなたのやる気をアップされる栄養剤となるに違いない一冊だ。

文=アサトーミナミ