シリーズすべての流れを解説!『PSYCHO-PASS サイコパス3』放送直前振り返りレビュー ~心が数値化される未来の“正義”とは?~

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更新日:2020/4/24

 「正義とは何か?」この問いに、果たしてあなたは即答できるだろうか?『PSYCHO-PASS サイコパス』は、2012年にノイタミナ枠にて放送を開始したSFアニメ。第1弾シリーズは警察ドラマ『踊る大捜査線シリーズ』を出掛けた本広克行監督が総監督を務め、『魔法少女まどか☆マギカ』で脚本を担当した虚淵玄氏がストーリー原案・脚本を務めたこともあり、サイコパスは放送前から注目を集め、さらに現在も多くのファンを魅了し続けている人気作。最近では、アニメに留まらず、鈴木拡樹主演で舞台化もされている。

 そんな「サイコパスシリーズ」の新作『PSYCHO-PASS サイコパス3』の放送が、本日10月17日(木)深夜に控えている(※初回は特番、本放送は10月24日(木)深夜より本放送第1話放送開始)。サイコパスシリーズを観たことがない人でも途中参加できるよう、本記事ではこれまでのシリーズの流れを概観していく。ちなみに、本記事はネタバレを含んでいるため、くれぐれも注意して読んでほしい。

【2012年10月~2013年3月放送】『PSYCHO-PASS サイコパス』

『PSYCHO-PASS サイコパス (上)』(深見 真/KADOKAWA/角川書店)

 舞台は2112年、厚生省管轄の巨大監視ネットワーク・シビュラシステムによって、人々の感情や欲望、社会病質的心理傾向はすべてが記録・管理されていた。サイマティックスキャンによる生体力場の解析によって、魂の判定が可能となり、職業適性、恋人適性、果ては罪を犯す可能性のある人間・潜在犯の特定まで、シビュラが担っている社会。

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 本作の主役・常守朱(つねもりあかね)は、厚生省公安局刑事課一係に配属された新人の監視官。同じく監視官である宜野座伸元(ぎのざのぶちか)や、執行官・狡噛慎也(こうがみしんや)をはじめとする刑事課一係の面々とともに、ドミネーターを片手に、次々と起こる凶悪事件の真相に迫っていく。

 ドミネーターとは、シビュラに常時接続されている銃のことで、“犯罪を犯す危険性”を数値化した犯罪係数の測定と規定値を超えた場合の対象の鎮圧が可能だ。裏を返せば、規定値を超えない限り、対象がどんな残虐な行為を働いていたとしても、ドミネーターで撃つことはできない。

 このシステム上の穴を突くようにして現れるのが、槙島聖護(まきしましょうご)という謎の男。常守は凶悪事件の黒幕である槙島と対峙することになるが、槙島に銃口を向けてもなぜかドミネーターのロックが解除されない。挙句の果てに犯罪係数0というあり得ない数値が表示されることに。

 のちに、槙島はサイマティックスキャンと犯罪心理が一致しない特殊事例・免罪体質の持ち主であることが判明する。槙島はシビュラでも、裁けないイレギュラーな存在だった。この一件を境にして、シビュラが提示する「正義」が揺らぎ、常守と狡噛の思想や行動が変化していくことになる。刑事として槙島を追うことに限界を感じた狡噛は、個人的に捜査を進め、ついに槙島の殺害に至る。その後、シビュラ管理圏外へ逃亡し、行方がわからなくなってしまう。狡噛と常守、各々の“正義”の在り方とは――。

【2014年10月~2014年12月放送】『PSYCHO-PASS サイコパス2』

『PSYCHO-PASS サイコパス 2 1』(サイコパス製作委員会、橋野サル/マッグガーデン)

 2114年、常守朱は監視官として「法」という正義を胸に、監視官・霜月美佳(しもつきみか)や執行官・東金朔夜(とうがねさくや)などの新しい面々を加えた刑事課一係にて、各所で起こる犯罪を取り締まっていた。

 第1期で監視官だった宜野座は、犯罪係数の上昇による色相の悪化によって、監視官から執行官に降格。宜野座の執行官降格のタイミングで、刑事課一係に監視官として就任するのが霜月である。霜月は槙島聖護が起こした事件で友人を失った過去を持ち、潜在犯は容赦なく取り締まられるべきと考えている。

 同じく新しく就任した執行官・東金は、奇妙な経歴の持ち主。シビュラ統制下では、犯罪係数が100を超えると潜在犯認定されるが、東金は過去に769という異常な数値をはじき出したことがある。これは犯罪係数制度導入以来の最高値だ。また、東金は人の色相を濁らせて、黒く染めることに快感を抱く異常者でもあった。その東金の次なるターゲットにされたのが、常守だった。

 東金は、常守の祖母・常守葵(つねもりあおい)を撲殺し、常守を憎しみで染めようとする。常守は憤りからサイコパスを一時的に濁らせるが、それでも常守は個人の感情による正義の行使ではなく、法による公正な裁きを与えようと行動する。東金の犯行を知ったうえで常守は「あなたを逮捕します」と言い、あくまでも法の精神を崩そうとはしなかった。

 第2期はこうした組織内部での問題が進みながら、同時に鹿矛囲桐斗(かむいきりと)によるシビュラへの報復に焦点が当てられている。鹿矛囲は、15年前の航空機墜落事故の際、多体移植によって唯一生き残った人間。多体移植とは、複数の人間の体を結合させる手術のことで、鹿矛囲は事故で命を落とした184名の体を繋ぎ合わせて生き延びていた。脳に関しても多体移植を受けているため、システムからは、単なるつなぎ合わせた死体として処理され、結果的にシステムに認識されない存在となった。

 鹿矛囲は、15年前の航空機墜落事故が省庁間の政治的な問題によって発生したこと、そして、その果てにシビュラが運用され続けている事実を掴み、シビュラに対してテロ活動を展開する。鹿矛囲は、瞑想と薬物投与によって人のサイコパスを良好に保つ方法を身に付け、犯罪係数の上昇した者のサイコパスをクリアにしていった。こうして鹿矛囲は、人工的に複数人の免罪体質者を作り、「シビュラよ、僕たちの色が見えるか?」とシビュラの正当性を改めて問い質していく。

【2015年公開】『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』

『小説 劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』(深見真/マッグガーデン)

 2116年、狡噛が国外へ逃亡してから3年が経過したころ、内戦状態にあるSEAUn(東南アジア連合)にて試験的にシビュラが運用され始めていた。しかし、そのSEAUnから日本にテロリストが侵入。常守たち刑事課一係が捕らえたテロリストの脳内記憶には、3年前に逃亡した狡噛の姿が残されていた。

 狡噛の行方を追うため、常守は単身で国外捜査に乗り出し、狡噛が潜伏していると推測されるSEAUnへ潜入。シビュラが試験運用されているSEAUnの海上都市・シャンバラフロート、その案内役である国家憲兵隊隊長・ニコラス・ウォンに監視されながらも行動を開始する常守。軍による反政府ゲリラの掃討作戦の最中、狡噛の姿を発見し、常守は3年ぶりに狡噛との再会を果たす。

 常守は狡噛と行動をともにしながら、狡噛が反政府ゲリラの民主運動に、対ドローン軍事顧問として参加していることを知る。だが、反政府ゲリラのベースキャンプは突如、デズモンド・ルタガンダ率いる傭兵団による急襲を受け、常守と狡噛は再び離散することに。狡噛は傭兵団に拉致され、のちに、デズモンドたちを雇ったのがSEAUnのニコラスだったことが判明する。

 シャンバラフロートに戻った常守は、ニコラスを含む政府の人間がいずれも規定値を大幅に超える犯罪係数であるにも関わらず、その数値を不正に操作し、正常なサイコパスであるように偽証していた事実を知る。その事実を掴んだ常守はニコラスによって捕縛され、狡噛とともに処刑されようとしていた。しかし、寸前のところで、公安局の助けが入り、2人は九死に一生を得る。

 シャンバラフロートの一件の裏で、シビュラが舵取りをしていたことを知り、常守は再びシビュラに迫る。水面下でSEAUnを支配下に置こうとしていたシビュラに対し、常守はシビュラ導入の可否を、選挙を通した国民の総意として決める必要があると説き、民主的プロセスの重要性を主張していく。