『兄友』作者の新作・主人公は、婚活のため女子高生に擬態するたぬき! 爆笑と胸キュンが同居する、そのトリッキーな物語の内容とは?

マンガ

公開日:2019/10/22

 婚活だぬきという設定の破壊力……! 高校生カップルの奥ゆかしき純愛を描いた『兄友』(白泉社)が完結し、次はどんな作品が始まるのかと思いきや、赤瓦もどむさん最新作のタイトルは『ラブ・ミー・ぽんぽこ!』。人間界につがいを見つけにやってきた化け狸(メス)がまさかの主人公である。

 その振り幅には驚かされるばかりだが、考えてみれば、単行本未収録の「恩返しUMAうにょくらげ」や「あやかしの一歩」など、人ならざるものとの交流を赤瓦さんはこれまでもしばしば描いている。

『兄友』でも、主人公の兄のドS描写だったり、彼氏の妹がハマる『グッド♡コウチューン』なる擬人化された昆虫集めゲームだったり、思わず吹き出してしまう描写が随所にちりばめられていた。胸キュンシーンとギャグコメディの絶妙な両立を見せる本作はむしろ、満を持しての新作ともいえる。

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 舞台は、紳士淑女の育成に力を注ぐ某学園。そこに凛と咲き誇る一輪の花、ミステリアスな美少女・たぬ沢の正体は、生き残る術として優れたオスを見つけるために山をおりてきた婚活中のメス狸・ぽんこ。つぶらな瞳と楚々としたふるまいで学園中の男どもを篭絡する彼女、学園でいちばん人気の金持ち&イケメンの二ノ宮兄弟は絶好の獲物……かと思いきや、兄・一(はじめ)からの大量の貢ぎ物と押しの強すぎるアプローチには怯えるばかり、弟・真(まこと)からは威嚇されまくってやっぱり怖い。というわけで未だつがいにふさわしい男を見つけられずにいたところ、うっかり窮地を真に助けられて、正体がバレてしまうのである。

 といってもバレたのは、ぽんこが婚活中のしゃべる狸というだけで、ふだんはたぬ沢として擬態していることは秘密のまま、なりゆきで二ノ宮兄弟のペット(?)として同居することになるのだが、真はたぬ沢を悪女と認定し憎む一方、ぽんこのかわいさにはメロメロ夢中。

 対して一は、天使と崇めるたぬ沢を射止める協力をぽんこに求めるかわりに、衣食住と婚活相手をぽんこにあてがうというギブアンドテイクの関係を要請。かくして生き抜くため、ぽんこはダブルスパイのような二重生活を送ることになる。

 異なる表裏を見せる二ノ宮兄弟の微妙な関係には萌えるし、人間の常識が通じないぽんこはすっとぼけているわりに獰猛・貪欲でそのギャップがかわいいし、実は正体は×××なのにぽんこ(たぬ沢)に恋をしかけてしまう某御曹司も気になるし、夢中になって読んでしまうのだが、文章だけではこの面白さが伝わらないのがもどかしい(トリッキーな設定であることだけは伝わったかと思う)。

 さらに1巻のラストでとある秘密が明かされるのだが「……そこ伏線だったの!」と驚かされて、ますます心をつかまれる。今のところ二ノ宮兄弟とも御曹司とも“恋”の予感は薄いけれど、心の結びつきは明らかに強くなっている。2巻以降、物語がどう動くのか予測はまったくつかないが、思いきり笑って胸キュンできることは間違いないと断言できる作品である。

文=立花もも