出世もスピードもあきらめて大丈夫!? 「あきらめた」動物たちの愉快な進化論

スポーツ・科学

2019/10/25

『できなくたって、いいじゃないか! あきらめた いきもの事典』(佐藤克文:監修、ペンギン飛行機製作所:製作/サンマーク出版)

 出世したいし、モテたいし、お金だってほしい! そう思うのが人間だけど、ちょっと欲張りすぎなのかもしれない――そんな風に考えさせられるのが、“できないこと”を抱えたいろいろな動物を紹介する『できなくたって、いいじゃないか! あきらめた いきもの事典』(佐藤克文:監修、ペンギン飛行機製作所:製作/サンマーク出版)です。大変そうだけど、あきらめたことで愉快な生き方を手に入れたようにも見える彼らの生きざまを、すこし覗いてみませんか?

■ラッコが「貝を食べる」意外な理由とは?

 動物園でも人気者のラッコは、おなかのうえで貝を割って食べる姿が有名です。でも、どうして? 海に住んでいるなら、魚を食べてもよさそうなのに…。

 じつは、ラッコははやく泳ぐことが苦手。そのため、ほかの動物とのエサ取り戦争に勝てず、「魚を食べる」ことをあきらめたのです。とはいえ、まったく泳げないわけではないから、ゆっくり動くものをつかまえて食べる手段を選んだラッコ。だから貝を食べているんですね。

 ちなみに、石を使って貝を割るのは、ラッコがみずから身につけたワザ。石を道具として使えるのは、動物のなかでもめずらしいそう。のんびりして見えるラッコだけど、とてもかしこい生きものなんですね!

■そういえば、カメってなんで“のろま”なの?

 童謡で歌われてしまうほど、“のろま”のイメージが強いカメ。でもそれは、早く動けないのではなく、「早く動こう」と考えていないから。敵に追われているときなどは、本気を出して早く動けるそうですよ。

 ではなぜゆっくり動くかというと、エネルギーを節約しているから。急いでもいないのに早く動くなんて、エネルギーがもったいない! 今まではのろまに見えていたのに、じつはドーンと大きく構えるカメが無性にかっこよく見えてきました。

 ちなみに、カメがエネルギーを節約するタイプの動物である一方、人間は動かないでいるときにも常にエネルギーを燃やしているため、がんばって早く動こうとする動物にタイプ分けされるのだとか。(ズボラな筆者としては、節約するタイプになりたいんだけど…)。

■出世なんかできなくたって、いいじゃないか!

 ほかに、出世をあきらめて“ふとん係”として一生を過ごすハダカデバネズミなど、めずらしい動物も。また、最近増えているという“牙を生やすことをあきらめたアフリカゾウ”の実態には、人間の行ってきた象牙狩りが関係しているのだとか。生きものの進化に人間が良くない影響を与えているとは、考えさせられます…。

 本書内の各ページで、生きものたちの話の「聞き役」となるペンギンの“ぺんた”にも注目を! 動物のおこぼれをもらうコバンザメに「くっついたお魚さんに、なにもお返ししないんだってぇ!」と、かわいい顔でツッコむところなんてナイス! ぺんたのおかげで、一緒に楽しく読み進めることができますね。

 何かをあきらめて、おトクな生き方を見つけた動物たち。「みんな違っていい。みんなで生きていこう!」そんな声が聞こえてきそう。動物から見たら、人間の生き方のほうがよっぽど滑稽かも。あなたも何かをあきらめたら、もっとラクに生きられるかもしれませんよ!?

文=吉田有希