荒川の河川敷に棲む住人たちによる、摩訶不思議シュールギャグ・ザ・ワールド

公開日:2012/5/18

荒川アンダー ザ ブリッジ1巻

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : スクウェア・エニックス
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:中村光 価格:576円

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埼玉県と東京都をずずーっと流れて、東京湾に注ぐ「荒川(あらかわ)」という一級河川がありまして。
日本には同名の川がいくつかありますが、「3年B組金八先生」でもよく登場した前述の荒川には、河童や星や元傭兵のシスターなぞが住んで…いや棲んでおり、摩訶不思議なコミュニティーを形成しているのです。

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テレビアニメ化、実写ドラマ化、映画化などですでに知っている人も多いと思います。中村 光(なかむら・ひかる)による人気コミックが電子書籍化されました。
本作はシュールギャグのオンパレードですが、非常識な世界の中で、突然胸を撃ち抜き、温かくする名ゼリフがフックのように飛んでくるあたり、作者の女性らしい繊細な感性の高さを感じさせられます。

トップ企業の社長を父に持つ“生まれながらのエリート”を自認する主人公・市ノ宮行(いちのみや・こう)は、親の教育により「他人に借りを作るべからず」がモットー。にも関わらず、荒川河川敷にすむ自称金星人の美少女・ニノに命を助けられるという最大級の借りを作ってしまう。望みが特にない少女の、唯一の願いは「恋をさせてくれること」。
こうして、行は、摩訶不思議な荒川河川敷コミュニティーに引き込まれていくのですが…。

某惑星ベジータの王子も死を賭してこだわった「エリート」。日本語で「選良」と訳すとおり、語源は「神に選ばれた(良い能力を持つ)者」で、じつはいろいろなエリートタイプがあります。
主人公・行が属するのはいわゆる「経済エリート」で、経済界に大きな影響力を持つタイプですが、この他にも、政治に顔をきかせる「政治エリート」、軍事に影響力や指導力を発揮する軍事エリートがあり、アメリカの社会学者、チャールズ・ライト・ミルズ(1916年~1962年)は、この3つを「パワー・エリート」という権力層に定義した、ということです。
現代では、さらに文化的エリート、スポーツエリートなど、いくつかのエリートタイプがあるようですが。

幼少の頃からエリート教育(早期英才教育)を受けた行は、本人の自覚がないところでトラウマを抱えていますが、それが奇妙な住人たちによって、どう変化していくのか。笑いとマジの絶妙な幸福感を、本作で味わってください。


生まれながらの勝ち組、経済エリートクンのモットーは「他人に借りを作るべからず」…

…なのに、命を助けられるという、ヘビーな借りを女の子に作ってしまう

唯一、借りを返せる願いは「恋をさせてあげること」

荒川に棲む住人たちの村長。河童です(上のコマ)

星もいます。名前も星です(上のコマ)