怖いけど可愛い! 臓器売買、売春、ドラッグ…サスペンス漫画『ギフト±』の主人公・鈴原環の魅力

マンガ

公開日:2019/10/26

『ギフト±』(ナガテユカ/日本文芸社)

 国際捕鯨取締条約の8条2項によれば、捕鯨調査の際、調査後のクジラは完全に利用することが義務付けられているそう。肉はもちろん、油、ヒゲ、骨に至るまで、クジラには無駄なところが一切ないそうです。そして、それは人間も同じだそうで…。

『週刊漫画ゴラク』で連載中の漫画『ギフト±』(ナガテユカ)は、“クジラ”を巡るサスペンス。お察しの通り、クジラとは隠語。作中では臓器売買のために犠牲になる人間のことを“クジラ”と呼んでいます。

 主人公の鈴原環(たまき)は、学校では浮いた存在。でもその正体は、臓器売買グループの構成員。天才的な解体スキルを持ち、そのうえ顔も可愛いという、スーパー女子高生なのです。

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 クジラのターゲットとなるのは、更生の見込みのない凶悪犯たち。環は彼らのことを「獲っていいクジラ」と呼び、問答無用で命をいただくサイコパスです。一方、「獲っちゃいけないクジラ」に対しては、慈悲深い優しさを見せることもあります。まさに、主人公と呼ぶにふさわしい二面性を持つキャラクターです。

 この作品では、臓器売買だけでなく、JKビジネス、売春、ドラッグ、マフィアなど、世の中のありとあらゆるタブーが絡んできます。実際に起きた事件がモデルになっていることもあり、しんどい描写も結構出てきます。グロテスクなシーンも少なくありません。「ちょっと苦手かも…」と思って読めないでいる人もいると思うんですよね。

 でも、ご安心ください。随所に見られる主人公・環のキュートな日常生活によって、しんどいシーンがかなり緩和されるようになっています。サイコな環の可愛いところって一体? と思った方もおられるでしょう。というわけで、環の“サイコ可愛い”一面をご紹介します。

●ベッドの周りはぬいぐるみでいっぱい

 普段はダークな世界で暗躍している環ですが、自室はどこにでもいる女子高生そのもの。ユニークな顔が描かれた壁掛け時計に、ふかふかベッド。そして、ベッド周辺を、数十個のぬいぐるみが取り囲んでいます。環の相棒、タカシがプレゼントしているようです。ただし、センスは微妙。

●授業は基本寝てる

 学校の勉強にはそこまで熱心じゃなく、授業中は寝ていることが多いようです。記念すべき初登場シーンも、寝ていました。クラスでは「顔は可愛いけど、変な子」という地位を確立しているようで、放課後まで寝ていても起こしてくれる友達はいません。でも、クラスメイトに呼び出されれば、とりあえずお茶に付き合うくらいの社交性は持ち合わせています。SNSにも疎いようで、LINEの使い方を知りません。流行にはあまり興味がないみたいですね。

●食べ物にいつも感謝

 命を扱う仕事をしている環は、食べ物にも敬意を払います。目玉焼きを食べる際には心の中で「トリさんに感謝」と呟きながら手を合わせるのです。何気ない環の仕草が可愛い! 世の中には「食事の前に“いただきます”を言う必要はない」という勢力が一定数いるようですが、そんな方々には、ぜひ環のこの姿勢を見習ってほしいですね。「いただきます」というのは単語でしかありません。大事なのはいただく命への感謝なのです。

●初恋を大事にしている

 ストーリーの最初から、環には心に決めている人がいます。それが、英琢磨先生です。かつて環の心臓移植を担当した医師ですが、とある事件により現在は指名手配犯として追われる身です。実はかなり近い場所にいるのに、お互いそのことに気が付きません。感情表現が苦手な環ですが、英先生のことを考えるときだけは乙女チックになります。

●口癖は「命は大事に」

 臓器売買の構成員らしく、ぶっ飛んだ死生観を持っている環。「獲ってもいいクジラ」には、命乞いをされようと、関係ありません。容赦なく手にかけます。ただ、そうではないカタギの人間には、たびたび「命は大事に」という言葉をかける優しさを持ち合わせています。今まさに命を絶とうとしている子にも、転んで膝を擦りむいただけの子にも、等しく命の大切さを訴える。真面目すぎるところもまた可愛いんです。

 デンジャラスな環にもこんなキュートな一面があって、環がクラスメイトにいたら、気になって仕方ないはずですよね。

 現在17巻まで発売中の『ギフト±』をチェックしてみてほしい。

文=中村未来(清談社)